障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2015年10・11月号 339号巻頭文

第17回全国交流集会in神奈川 報告
~子どもは子どもの中で育つ~

神奈川実行委員長  渋谷治巳

渋谷現地実行委員長の開会挨拶
渋谷現地実行委員長の開会挨拶

10月3日・4日の両日、横浜市内の〝かながわ労働プラザ〟において第17回全国交流集会in神奈川を開催しました。全国各地で「共に」を目指している仲間が集まり、交流を深め、元気を分け合って地元に持ち帰っていただくことを願いました。参加者は320名、近年になく多くの方々にお集まりいただきました。ありがとうございました。

集会は地元神奈川の若者たちの元気な開会宣言によって始まり、現地実行委員長、全国連代表の挨拶のあと日教組障害児教育部長・下坂千代子さん、神高教組委員長・馬鳥敦さんにお言葉をいただきました。

続いて現地実行委員会事務局長より「神奈川の現状と課題」を報告しました。団体の強い働きかけにより2010年11月、県教委との間で「神奈川県では、〝共に学び共に育つ教育〟を学校教育の根幹として位置付け、その充実推進に取り組んでいる」「障害の有無に関わらず、すべての子どもたちが、同一空間(教室)・同一時間・同一内容で学ぶことを基本とする」などが確認されています。しかし、現状はどうでしょうか。「障害児」の高校入学は「障害の種類・程度」に関係なく、1995年度から定員内不合格はなくなり、2004年度から定員オーバーの全日制に合格していますが、「小・中学校を普通に、そして当たり前に高校へ」と声を上げる「障害児」は減少していて、就学する前から振り分けが進められていることを実感しています。また、県教育委員会にインクルーシブ教育推進課が設置されたものの一般校に個別に指導するための「みんなの教室」を置くことを決定するなど予断を許さない状況です。高校においてはインクルーシブ教育実践校を指定するが、発達障害の生徒の通級教室導入が危惧されます。

横浜市の「障害者プラン」においては「インクルーシブ教育」の言葉すらありません。

神奈川の「共に学び共に育つ教育」の基本理念に基づいたインクルーシブ教育の再構築が、私たちの課題です。

引き続き、本集会のメインであるパントマイム劇団・湘南亀組の公演「越境の身体」がありました。事前に新聞記事で紹介されたため、亀組の公演を楽しみにしていた方も多くいました。「瞽女」やチャップリンの作品を題材にしたと思われる「独裁者」や「モダンタイムス」、反原発を主張する「もんじゅの浅知慧」など障害者と健常者が混然として創り出される世界観の鮮やかさと迫力に圧倒されました。フラットの会場で後方から見えにくかったことは残念であり、反省点です。

その後、第1から第5分科会に分かれ活発な討議を行いました。内容については、各分科会発表者にお任せし、まずは私の反省を述べなければなりません。

第1分科会「出生前から就学まで」に神奈川の当事者の仲間を送り込めなかったのです。

現在、血液検査による出生前診断に代表される生命医療の技術が急速に開発され、大きな広がりを見せています。一方、福島の原子力発電所の事故の影響はあまり取り上げられませんが、広がりを見せているはずです。この国の優性思想は、新たな段階に入ってしまったと感じています。その意味から、当事者の立場からの発言が必要でした。(第5分科会を他の方にお願いして、私も第1分科会に参加すべきでした。)

私の参加した第5分科会は、発題者がそれぞれ当事者や親の立場から、生い立ちや現状について語りました。「差別解消法」を当事者の側から考え作りあげていくことが大切、という視点から企画したものです。助言者には、障害者差別裁判を多く取り組んでこられた弁護士の藤岡毅さんにお願いしました。

長谷川律子全国連代表の挨拶
長谷川律子全国連代表の挨拶

差別解消法にも優性思想に関連する条文などあるはずもありません。それどころか法律自体は差別とは何かすら、書いてありません。確かにこの法律が制定されたことは一歩前進であり、道具として最大限活用すべきだと私も思います。しかし、極めて不十分な内容であることは今後も指摘し続けなければなりません。

差別は「解消」ではなく「禁止」すべきものです。

文科省は、「特別支援学校は合理的配慮である」などと言っているようです。また、神奈川県教委のインクルーシブ教育推進課は「みんなの教室」の設置を打ち出しています。「障害の有無に関わらず、必要な子どもに個別の支援を提供する」とのことですが、個別支援級が対象を障害が無い子どもたちにまで拡大され、固定化されてしまわないかという危惧を抱いています。これらの事実は差別解消法を分ける口実として使われる危険性を示しています。また、内閣府のガイドラインの例示には聴覚障害の人に対して筆談を行う、視覚障害の人に文章を読みあげるなど、その場の判断やちょっとした気遣いとして当然行われるべきことも含まれています。これまで自然に行われてきたことが、「合理的配慮」という概念を持ち込むことにより、特別なことにされていく可能性があります。また、これが中央官庁の職員用に作られたものであることを考えると、問題を矮小化しているような気がしてなりません。

行政に任せず、私たちで作りあげていくことの重要性を再確認しました。

さて、3日の夜には皆さんお楽しみの交流会がありました。200名近い参加があったのでしょうか、たくさんの人がいて正直驚きました。都道府県別のパフォーマンス、私が印象に残ったのは兵庫県の「反戦タイガース」の皆さんでした。「アベ降ろし!(六甲おろしの替え歌)」。もうタイガースファンになってしまおうかと思いました。

翌10月4日は分科会終了後に全体会を行い、各分科会の討議の報告のあと、来年の開催地である大阪へとバトンを繋ぎ、今年の全国交流集会を無事終了しました。

参加者アンケートも「子どもは子どもの中で育つ」についてもっと丁寧な説明が欲しかったなど重要な指摘もいただきましたが、評価の声もいただきました。多くの方々のご協力により一定の成果を挙げられたものと考えております。これを新たな神奈川の運動へとつなげて参る所存です。ご参加、ありがとうございました。

神奈川新聞10月5日

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 第17回全国交流集会in神奈川 報告 ~子どもは子どもの中で育つ~/第17回全国交流集会・分科会報告 第1分科会「出生前から就学まで」/第2分科会「地域の子どもと一緒に学ぶ」/第3分科会「地域の学びを高校へ」/多様な教育機会確保法について/安倍首相の発言と「多様な教育機会確保法案」/普通学校もあかんねん その12/●報告 第32回共同連全国大会・北海道大会に参加して 〜なしてきるの? なしてわけるの?〜/差別解消法の地方自治体 対応要領への要望ポイント/●相談からコーナー 医療的ケアが必要な子で普通学級に入っている例がありますか/「康ちゃんの空」から〝共に〟の風を 〜 復刻のお知らせ 〜/事務局から/事務局カレンダー