障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2014年4月号 323号巻頭文

この社会を燃え尽き崩壊させないように

障害児を普通学校へ・全国連絡会 事務局長  佐野公保

 多くの皆さんが参加してくださり、世話人会、学習会、そして総会が終わりました。時間いっぱいに意見がだされ、議論もあり、概ね、会の課題が共有できたのではないかと思います。しかし、具体的に動いていくにはこれから準備してすすめていかなければなりません。文科省は、本来なら「改めたい」と言って、施策として数値目標を立てて分離教育を減らしていくことくらい考えるべきですが、まったく何も「改めるつもりはない」かのようです。何とかしていかなければなりません。それには何としても全国各地の会員の活動の結集が必要です。事務局、運営委員会もそのために精いっぱいやっていこうと思っています。交流会も盛り上がっていました。その勢いも反映させていきましょう。そのため、どうしても考えてしまいますが、会費、カンパのほうもよろしくお願いしますね。

 と言いつつ、さて、と考えるのですが、正直なところどこから手がつけられるのかと考えてしまいます。何せ、今この私たちの国、社会、そして学校は、競争を激化させて強者、弱者を作り、その弱者を排除しようとしています。そのような動きは、あらゆるところでますます加速し、これまでの文明のように燃え尽き崩壊していくのではないかという気さえします。

 「特養」待機者52万人、非正規労働者は全体の3分の1で1813万人、失業者3・6%の232万人、子どもの7人に1人が貧困家庭で育つ、いわゆる引きこもりは160万人以上、全世帯の8%が独居高齢者で450万人超、単身世帯の増加はすでに30%で今後は40%近くに等々の数字は、私たちが求めている「共に生きる社会」の前提を揺るがしています。原発事故という不幸な事態を引き起こしてしまったことも、そのことを露呈させています。地震、津波という自然災害ですら、私たちの今の生き方を問うものだと思います。

 戦後に生まれ、団塊の世代と言われた私自身においても、これまでの生き方が果たして共に生きることを進めてきたのか省みなければという思いが正直なところあります。間違いなく「特養」待機者の多くに我々がなっていくのだと思います。

 悲惨な戦争の反省はそれなりにあって、冷戦という時代も長くあったけれど、国連は崩壊せずに、そこで語られる人権が、子ども、女性、障害者等の権利の保障、拡大をしてきてもいると思います。やっと日本も批准した「障害者の権利条約」、それに応じての「改正障害者基本法」や「差別解消法」、「学校教育法施行令改正」等もその文脈にあるはずです。それなりのかけ声はあるのです。

 それなのに、今のこの日本社会や学校の現実はどうでしょうか。条約や法といったものがまがりなりにも期待を持たせてくれるせいかもしれませんが、あまりの落差、いや、落差そのものではなくて、変わらなさに立ち尽くしてしまいそうです。

 地球は一つ、世界は一つということが実感的に現実化してきてしまい、様々なことを考えられなければならないのと同時に、それぞれの国、民族、言語等について、子ども、女性、障害者等について、格差、貧困、環境等についてなど個別のことも考えられなければならないのが現実です。こうした狭間にあっては、一つ一つの課題が複雑に絡み合い、ますますその解決が難しくなっているのだと思います。とくに、具体的に身に迫ってくることとしての、ナショナリズム的な意識の高まり、一方でのグローバリズム的な経済の影響が顕著であり、本来的な「共に生きる社会」への課題解決にとって大きな障壁となっている状況なのではないでしょうか。

 そのような中で私たちの求める「共に学び共に育つ」教育のありようも、なかなかその壁を突き崩せていません。文科省はこれまでを「改めて」と言って施行令を「改正」しておきながら、これまでと「変わらない」と吹聴しています。DPIの集会で「分離教育を減らすつもりがあるのか」と問われても応えられていません。保護者の意向を尊重という言葉もありますが、何かというと「付き添い」を強要してくるということが起きています。総会でも話し合いましたが、こうしたことを焦点化して取り組んで行こうと考えています。

 共に生きる社会をどう見通すか。それは、昔のような大家族にというようなナショナリズム的な意識ではなく、かといってグローバリズム的な競争に惑わされるのではなく、一人一人が生かされるにはどうしたらいいかを追求していくことだと改めて思います。そしてそれこそが今の文明、社会を燃え尽き崩壊させないことにつながっていくのだと思います。「共学共生」に改めて希望をもっていきましょう。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2014年4月323号目次
・巻頭 この社会を燃え尽き崩壊させないように
・事務局カレンダー 4月・5月
・2014年度世話人会報告
・世話人会学習会に参加して
・2014年度総会報告
・2013年度収支決算報告書
・2014年度予算書
・特別基金収支決算報告書・予算書
・普通学級就学を迎えて—こどもの「当然」とわたしの「必然」ー
・就学奨励費について
・特別支援教育就学奨励費についてーある自治体の場合ー
・全国連・初の連載小説! 第17回『ただやみくもな、わけではない』
・相談からコーナー 学校から転級を勧める呼び出しが
・シリーズ憲法改悪9ー憲法と私ー
・事務局から