障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2014年2・3月合併号 322号巻頭文

2014年度活動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会  運営委員会

Ⅰ 2013年度の活動について

 2013年度は事務局体制において専従の体制がなくなり当番体制になりました。会計、事務局長の交代もあり、会の運営、財政はまさに試行でした。
 しかし運動ということについては試行ということはあり得ず、事務局会、運営委員会を通して継してすすめてきました。こうした運動と運営の二つの側面からこの一年を振り返り、これからの活動につなげていきたいと思います。

1 運動の取り組み

①相談・支援

運営委員会等で必要な情報の共有化をし、組織として対応していくようにしてきました。概ね機能し、対応をすることができたのではないかと思っています。
 ただ、保護者と思いを了解しあうことが難しかったケースもあり、支援のあり方が課題となったこともありました。共通理解をすすめ、支援をどうしていくかが課題です。
 「全国一斉就学相談ホットライン」は2回実施しました。しかし、実施地域も多くなったにもかかわらず相談の件数は少なくなりました。健診などによって早期から特別な場に取り込まれています。就学相談は悩む人がいる限り、働きかけを工夫して今後も取り組みが必要です。

②制度改革への取り組みと集会、学習会等の開催

 世話人会・総会では、運動として原則統合の原理原則に立ち返って考えていくこと、憲法改悪の動きに私たちの立ち位置から対抗していくことなどが確認され、以降の運動をすすめてきました。
 制度改革の大きな課題は、差別禁止法制定と学校教育法施行令の改正でした。政権交代があって見通しがつきませんでしたが、障害者権利条約の批准もその先にありました。
 6月には「私たちの考える合理的配慮とは」を考える学習会を計画しましたが、直前に施行令「改正」のパブコメが始まり、それを考える学習会となり、パブコメにも取り組みました。
 その6月には、差別禁止法が、当事者の力もあり、「差別解消法」となって制定されました。そして施行令の改正もされました。しかし、保護者の意向を最大限尊重すると言ってはいても、教育委員会が総合的に判断をするということで、このままでは実態的にはほとんど変わらないと考えられます。就学の仕組みを原則統合とするインクルーシブ教育の実現のためには法の中身を充実させていくことが必要です。インクルネットと協力してインクル共ちゃんパンフⅡを広めました。12月にはやっと障害者権利条約の批准をすることが決まりました。今年1月にされた批准を生かしながら、「就学の仕組みを改めた」としていることを足がかりにして、私たちの運動の力の現実を踏まえながら議論を深め、力を結集して運動をすすめていくことが必要です。
 10月には、第16回全国交流集会IN福岡を現地実行委員会の力を得て開催することが出来ました。全国からのべ270人、地元福岡では100人以上の参加がありました。開催によってあらためて地域での運動が高まったのではないかと思います。
 制度改革の流れが、権利条約の批准で一定の区切りとなりましたが、原則統合への改革はまったく不十分です。私たちの運動の力が足りなかったということでもあります。どうしていくかが課題です。そこで映画「養護学校はあかんねん」の上映会も共催で行われました。運動の原点をあらためて考えさせるものであったと思います。
施行令の「改正」をどう受け止めていくか、特別支援教育就学奨励費の問題などが議論となりました。原理原則に立ち返りながらの議論が十分にできていなかったことを課題として考えていかなければなりません。

③会報・広報

 編集委員会を定例的に開催しました。その分、円滑な発行が出来たのではないかと思います。予定通りの年間10回の発行を、何とか体制がとれて発送することが出来ました。
 内容的には、巻頭記事を中心にその時の原則統合の運動の取り組みをすすめる内容から、事務所の当番カレンダー等、必要な情報を伝えてきました。憲法改悪の動きに私たちの立ち位置で対抗していく取り組みとしての企画連載も行いました。
 会報と合わせて情報を発信するホームページ(HP)は、それなりに充実した情報の掲載が行われています。しかし、十分に生かせなかったこともありました。会員の交流に生かせるメーリングリスト(ML)を作ることを考えましたが、具体的な検討や作業が出来ませんでした。HPと合わせて検討していかなければならないと思います。

2 組織運営

①会員状況、財政状況について

 年々繰越が減少する財政状況でしたが、会員状況の把握をすすめ、会費の納入やカンパのお願いをしました。高齢等の理由で退会された会員も11人いましたが、かなりの会員から会費、カンパの納入をいただき、さらに新入会員が21人ありました。
 財政運営的には、購入の工夫、無料発送先の見直しなどで支出減を図りました。課題となっていた会議、事務所当番の交通費の実費支出は実施しました。支出はかなり縮減し、繰越金が増加に転じ、財政の見通しがついて来たと考えます。

⑤事務所・事務局の運営について

 今年度は、事務局会は12回、運営委員会は10回開催し運動をすすめてきました。会報の発送作業は運営委員会の前に行いました。編集委員会は発行の準備をし、拡大編集委では年間通しての計画も考えました。出席、参加状況については、みんな忙しく、機能として役割は果たせてきましたが、全体の数からすると多くはなく、また、固定化している状況があります。
 実際の活動については運営委員が分担してやって来ました。それなりに安定的に担当できていましたが、実際に機能していくには難しいところもありました。担当体制の整理、明確化、方法の工夫が必要です。運営委員として保護者また若年層が加わってくるといいと思います。
 専従体制がなくなり、事務所の機能を当番ということで、新しく会員になられた方も含め約10人の方に曜日等を決めて交代でやっていただきました。それでも事務所が留守という日もありましたが、留守電での対応、日誌による引き継ぎによって廻すことができました。業務を明確にして継続してやっていただけたこともありがたかったです。また、この事務所に誰かがいる体制をもっと有効にできたらとも思います。

Ⅱ 2014年度の活動について

1 最近の情勢

①制度改革に関する状況

 私たちが共に生き共に学ぶ教育として求めてきた原則統合の制度改革はまだ達成されていません。私たちの運動の力も不足しています。それでも、一定の改革がなされてきたと考えます。その不十分さは承知の上で、それを手がかり足がかりにして障害者差別解消法の実質的な中身を充実させていくこと、実際の就学において保護者、本人の意向が通っていくようにさせていくことを、これからの運動としてすすめていかなければなりません。批准された障害者権利条約をふまえ、小さな部分であっても、変わったこと、変えられたことを最大限押し広げていくような運動をすすめていくことが必要だと思います。

②現在の教育・学校の状況

 社会の困難な状況を背景に、政治が教育、学校に権力的な介入をしています。安直に競争をあおり、教育格差を拡大し、地域の力や協同を破壊しています。教育や学校はますます共に学ぶ空間ではなくなっていっています。子どもたちも、保護者も、教職員たちもばらばらにされています。それは、いじめの問題に象徴されるように様々な問題を生じさせ、同時にそのような教育に対する抗いをも起こさせています。それに対しては、日の丸・君が代強制等による管理や、道徳の教科化や歴史教科書問題に見られる教育の統制を強めています。憲法改悪のもくろみもその先にあります。これは、朝鮮高校の授業料無料化除外のように、その統制に服さないものは差別し排除するというものであり、自由や共生が否定されかねない状況となっています。

③共に学び共に育つ運動をさらにすすめよう

 原則分離の特別支援教育にしがみついてそれをインクルーシブ教育とする、統合を原則としない教育は、こうした差別、排除の教育に他なりません。その意味でそれを突破し、障害者権利条約でいうインクルーシブ教育を求めることは、全てを含みこんだ「共に」の教育への転換を求めることです。私たち全国連の「地域の学校で共に学び共に育つ教育」を求める運動は、今こそ必要な運動だと思います。運動は33年目になりますが、これまでの運動は確実にそのことを示し、なおかつ獲得した一定の位置を示してきたのだと思います。このことには自信と確信をもっていいと思います。だからこそ、制度改革もなされなければならなくなっているのです。しかしそれだけに、原則統合を求める要求への抵抗はさらに強まると思います。権力にとってはますます譲れない所に近づくからです。周りの様々な状況もかなり厳しいでしょう。例えば、地域の学校への就学を認めておきながら付き添いを強要するといったことが目立ってきています。障害者権利条約に規定されている、合理的配慮を行わないことは差別であるということも手がかりにして、分け隔てることのない原則統合のあり方を要求していくことは、この差別、排除の教育の転換を迫っていくことになると思います。
 こうした運動の展開は、「公共の福祉」を「公益と公の秩序」に置きかえ、基本的人権をないがしろにしようという憲法改悪の動きに抗っていくことともかかわります。地域の学校で共に学び共に育つことを求める運動は、まさに現憲法の理念を実現しようという運動でもあると思います。自信をもって取り組んでいきましょう。

④組織強化と運営の活性化

 組織の強化と運営の活性化が必要です。財政的には見通しがついてきましたが、引き続き全国連組織の基盤として会員状況を把握し、何より会員のつながりを広げていく必要があります。
 運営的には、事務所が機能していくこと、事務局会、運営委員会といった話し合いをしながら活動をすすめること、具体的に学習会等や支援の活動を行うことがなされなければなりません。事務所の当番体制も、より有効な体制を考える必要があります。
 会報が主たる会員への広報、連絡の機会となっていき、それに連動する形での事務局会、運営委員会で会の活動がすすみます。限られた時間、作業といったことで、議論が不十分になる場合もあります。また、参加者が少なくなり、固定化してきている状況もあります。事務所内の仕事の方法がまだ確立できていません。こうしたことを合わせて考えていく必要があります。

2 今年度の活動方針

①相談・支援の活動
②インクルーシブ教育実現と制度改革の取り組み
③会報・広報の活動
④集会・学習会等の開催
⑤組織の強化と運営の活性化

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2014年2月322号目次
・巻頭 2014年度活動方針(案)
・事務局カレンダー 3月・4月
・シリーズ憲法改悪 自民党の改憲草案とどう向き合うか—「改憲」潮流を押し返す視座をもとめて―
・手さぐりの日々
・小学校卒業を控えて
・「高校浪人・宏之の日々」その1
・全国連・初の連載小説! 第16回『ただやみくもな、わけではない』
・中川明著『寛容と人権』を再読しながら思ったこと、考えたこと
・●相談からコーナー 親が付き添わないなら欠席にすると言われたのですが
・事務局から