障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2013年6月 315号巻頭文

♪ 来んね、福岡へ! 待っとるけんね! ♬
いくつもの分断線を取り払うために

第16回全国交流集会地元実行委員会・委員長  髙石伸人

第16回全国交流集会 in FUKUOKA
日程 2013年10月12日〜13日

会場 福岡リーセントホテル
・福岡市東区箱崎2丁目52番地1号
・地下鉄箱崎宮前③番出口より徒歩3分

参加費 3000円(高校生以下無料)
    2000円(一日のみ参加)
    5000円(懇親会費)
    ※宿泊所は各自でご用意ください

 個人的なことで恐縮ですが、四月八日に母が亡くなり、後を追うように五月十七日には姉が癌で逝ってしまいまして、時計の針が突然早回りをしてついていけないような、そんな虚脱感を覚えているところです。

 今回、たまたま全国交流集会の福岡開催に当たって、最初にその打診を受けたのがボクだったという理由だけで、お飾りの実行委員長を仰せつかってしまいました。いま、小竹町という人口八千人ほどの小さな町で、特定非営利活動法人ちくほう共学舎「虫の家」という共同体の事務局長をしています。法人化する前は、「自認可」施設を名のり、町補助金年間五万円の時代にも、十万円になってからも、「当事者主権」、「地域を変える」などと吠え続けました。しかしながら、寄る年波と補助金アップの誘惑には勝てず、二〇〇八年に法人化して「障害者自立支援法」上の地域活動支援センターとして今日に至っています。

 「虫の家」の設立が一九八六年で、その三年後に第三子の衆(ひろ)をさずかりました。まったく動揺がなかったかと言えばウソになりますが、日々「虫の家」のメンバーさんに鍛えられ、当時直方市社協職員として、北村小夜さんや徳田茂さん、牧口一二さん、杉本章さんなどを学習会に招聘して「洗脳」されたということもあって、家族みんなで「生まれてくれてありがとう」と、取ってつけたように話しかけたりしていました。そして、町内の保育園に通い始めるのですが、早速娑婆の「あつい壁」の洗礼を受けることとなり、一歳下のクラスが適当とする園長と保育士、さらに福祉課長とぶつかりました。半年ちかい交渉の過程で、息子の表情から持ち前のニュートラルな笑顔が消えていくことに気づかされて、隣町の保育所に転入することにしました。

 「おいちゃん、衆くんもボクたちと同じ小学校にあがるとやろ!」と頷きを催促するような同級生たちのまなざしに二の句が継げず、そのまま隣町の小学校に入学することにして、保護者としての義務を果たすべく教育委員会に赴いて就学させることを宣告しました。その後は中学校まで、ご多分に洩れずに、新興宗教の信者ででもあるかのように特学を勧める担任教師、時には校長と、何度も話し合い、すれ違い、腹立ちに酒量を増やしたりしながら、面倒くささをねじ伏せて中学卒業の日を迎えることになります。もうこの段階で相当に疲れているものですから、高校選択をめぐっての余力は頭髪と同じくらいに心細くなっていて、高教組に電話で支援要請をしてはみたものの、「無理ですね」と言われると、「しょうがないか」と早々に諦めて、衆に養護学校高等部というところに行くことを、身勝手に(有無を言わせずに)了解してもらいました。衆はいま二四歳ですから、もう高校卒業から六年が経ちます。あらためて、衆にとっての「学校」という時空を振り返るときに感じることは、「将来」を計算しない衆と、「将来」のためにいまを準備させられる「普通」の仲間たちとの関係の乖離が、学年の階段をのぼるごとにはっきりしてくるということでした。もちろん、「普通」の子どもたちは、その「将来」に夢や希望を抱いているわけではなく、「学校」というのはそういうところで、おとなという生き物は、そんなことしか言わないということに薄々気づいているのですが、身体が反逆しない間は、他にすることも思いつかず、仕方なく「学校」に通い続けているのだと見えます。

 いまの時代は、家庭でも地域でも、みんなが便利と安楽を求めて自分の穴の中で小さな幸福を愉しむという生活を送っている気がします。個室が用意され、パソコンやケイタイやゲーム機など、「個楽」(浜田寿美男)のツールには事欠きません。お腹が空けばコンビニに行くとおにぎりもラーメンも売っていますし、それどころか一通りの生活用品はほぼ揃っているのではないでしょうか。つまりは、お金さえあれば日々は何とか過ごしていけるのですから、そのお金を稼ぐという「将来」のために、やはり「学校」に行って勉強し、テストを受け、意味を問わない競争にも黙って参加しないわけにはいかないのです。

 「共に学ぶ」は「共に生きる」と切断できません。みんなが日々の暮らしのなかで「個楽」に分断されているという状況を放って「共学」を叫んでも、それは形式だけの、表面だけの「共に」に過ぎません。ひとり一人の分断は、当然に水俣、沖縄、福島に対する差別・分断に回路を結びます。「共生・共学」が今こそ願われ、実現されなければならないのは、この社会のいくつもの分断線を取っ払う、ひとつのきっかけになる、しなければならないと思われるからです。

 「やっぱ、わけんで、一緒がよかやん!」――どうぞ、さまざまな想いを福岡にお持ち寄りください。そしてもちろん、とんこつラーメンやもつ鍋も味わってください。いくらかでも元気を分かち合える、そんな集会にできたらいいな、と思っています。

 (特定非営利活動法人ちくほう共学舎「虫の家」・事務局長)

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2013年6月315号目次
・巻頭 
♪ 来んね、福岡へ! 待っとるけんね! ♬いくつもの分断線を取り払うため
・全国一斉就学相談ホットライン実施
・気管切開児への名古屋市初の看護師配置をめざして─3人揃って普通学級へ─
・小学校に入学しました
・シリーズ憲法改悪1
自民党日本国憲法改正草案の「障害者差別禁止」はホンモノか?
●全国連・初の連載小説 第10回—ただやみくもな、わけではない
●相談からコーナー 特別支援学級から「特別支援学校へ転校をするように」と言われたが
・保護者の付き添いを求められ、移動教室に参加できず
・中里絢音の移動教室参加を求める申入書
・事務局から
事務局カレンダー 6月・7月
・障害児を普通学校へ・全国連絡会 学習『私たちの考える「合理的配慮」とは… ?!』