障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2011年6・7月 296号巻頭文

第15回「障害児を普通学校へ・全国連絡会 全国交流集会 in おおさか」へご参加を

おおさか現地実行委員会 委員長 楠 敏雄

皆さんもご承知のように、一昨年発足した民主党政権のもとで、新たに「障がい者制度改革推進会議」が設けられ、障害者に関わる法制度の抜本的な見直しを計るべく積極的な検討が進められています。それらの見直し作業の中でも、特に重要かつ困難な課題が「障害者自立支援法」を廃止し「障害者総合福祉法」を制定することであり、現行の「学校教育法」における「別学分離制度」から障害児と健常児が地域の学校で共に学ぶことを基本とする「原則統合」の法制度へと改めることです。

日本においては、既に明治5年に初めて制定された「小学校令」において知的障害児や「浮浪児」を「廃人学校の対象」として教育の対象から排除していました。しかも実際にはその「廃人学校」へも通えず、「就学猶予・免除」の名のもとに不当に教育権を剥奪されてきたのです。そうした政策は第2次大戦後、「盲・ろう・養護学校」の整備として表面的な改善が図られたかのように見えましたが、障害児を「欠陥児」と見なして、別な場で「治療と訓練に励む」といういわゆる「療育」の思想が強調され、さらにその政策を体系化したものが1979年の「養護学校義務制化」でした。文部省( 現在の文部科学省、文科省) などの言うように「養護学校義務制化」によって、確かに障害児の教育の場は形の上では整備されたように見えますが、現実には本人や保護者の意に反して障害のある子どもは「盲ろう養護学校」への就学を一方的に強制される仕組みが強化されることになったのです。

私たちは、大阪・東京を始め、全国各地でこのような文部省の分離別学制度の強化に反対し、地域の普通学校で障害児と健常児が共に学ぶ教育を進める取り組みを行ってきました。とりわけここ大阪の地で発足した「全障連( 全国障害者解放運動連絡会議)」や、「全国連( 障害児を普通学校へ・全国連絡会)」など、障害者や教師などを中心とするさまざまな団体が、共に学びあう教育制度への転換を求めて闘いを続けてきましたが、文科省はそうした動きをそらすかのように「特別支援教育」の制度を打ち出しました(2007年4月1日施行)。しかしながら、文科省の言う「特別支援」とは結局のところ「障害児一人一人のニーズに応じた教育」を名目に、支援学校や支援学級さらには通級指導教室など、より一層障害児を健常児から分離する教育体制を強めることに他なりません。

この間私たちは、障がい者制度改革の動きに連動して、「共に学ぶ教育制度」への転換をめざす多くの人々に呼びかけて「インクルネット( 障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワーク)」を結成し、原則統合と「学籍一元化」、さらには「合理的配慮」に基づく個々の障害者への教育条件やニーズへの保障を求めてきました。私たちは、今国会で「抜本改正」が行われた( 提案された)「障害者基本法」においても、こうした「インクルーシブ教育制度」への変更をめざして、文科省や国会議員などに対し、様々な形で働きかけを続けてきました。結果的には基本理念の上では共に学ぶ教育の必要性を明記させることはできましたが、あくまでも分離別学の教育制度に固執する文科省の厚い壁を崩すことはできませんでした。

今回の交流集会では、この間の私たちの取り組みをしっかりと振り返りつつ、今後の新たな取り組みのあり方を模索していきたいと思います。また、大阪を中心に全国の多様な実践を出し合いながら、「ごちゃまぜ」の味を全国の仲間に味わっていただき、ついでに「ごちゃまぜの力の強さ」を各地の仲間に持ち帰っていただき、それぞれがより広いネットワークを作って、「分離別学」や「医療モデル」に固執する流れと、しっかりと対決し得る陣形を作り上げていかなければなりません。

論議は活発に、団結は強固に! これが大阪的ポリシーです。3年後の「障害者基本法の見直し」を始め、5年後、10年後を見据えた粘り強く緻密な戦略を立てて取り組んでいきましょう。そのためにも多くの皆さんのご参加と熱い討論を期待しています。

2011年7月

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

障害児を普通学校へ全国連絡会会報
2011年6・7月296号目次
第15回「障害児を普通学校へ・全国連絡会 全国交流集会inおおさか」へご参加を
7・8文科省交渉速報
文部科学省特別支援教育課長様 【インクルーシブ教育推進に関する質問事項】
全国連発足30周年企画リレートークNo2 No3
 【こころの故郷】【私たちの訴訟と全国連との関わり】
相談からコーナー就学特別編 【障害があっても普通学級へ行けるってホントですか?】
学校の放射能汚染【子どもたちの上限値が〈がれき処理作業者〉と同じで良いの?】
千葉の高校進学の状況
戦いは誰のために その5【公立学校、普通学級に通う】
相談からコーナー 【プールに入ってはいけないと言われたが】
事務局から