障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2021年2月3月392号巻頭文

今年は総会を開きたい 皆さんと顔を合わせて検討したい

障害児を普通学校へ・全国連絡会事務局

こんな想いを持ちながら、運動方針案をつくりました。今東京は、新型コロナ感染拡大で緊急事態宣言が継続され、自粛生活が 強いられています。この状況下での総会のお知らせです。多くの方に参加を呼びかけ、ご意見をと呼びかけたいのですが、「でき る範囲で参加を」とトーンが下がってしまいます。今回の総会は、延期や中止とするのをやめました。参加者を中心に検討を進め ることにしました。参加が無理な場合は、ぜひご意見をお寄せてください。

総会の前日には「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める」請願署名の提出も予定しています。また、 国会議員に請願署名賛同を訴えるロビー活動を行います。詳細はチラシをご覧ください。

3月下旬にはコロナ禍が収束し、署名提出の院内集会・総会へ、皆さんが参加できることを願うばかりです。

院内集会・請願署名提出
3月19日(金)参議院議員会館13時 受付 13時30分集会

総会
3月20日(土)タワーホール船堀10時~12時




2021年度   運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会運営委員会

はじめに

2020年度は、新型コロナの対応に追われた1年でした。昨年の運動方針を検討している段階では、こんな状況を予想だにせず 、集約した「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」署名をどのように生かそうか思案していました。 しかし総会も院内集会も延期となりました。10月の「第14回障害児の高校進学を実現する全国交流集会」も開催できませんでした。 その他にも、多くの取り組みが中止や延期となりました。

3月の突然の全国一斉の学校休校要請は、休校中もその後の学校生活にも大きな影響がありました。4月の緊急事態宣言では自粛 生活を強いられ「いつでも・どこへでも・誰とでも」とはいかず、こうした自由が制限されていた障害のある方たちの自立を求める思 いを再認識しました。

2021年に入っても感染は収まらず、再び首都圏に緊急事態宣言が出され、更に他の府県も続く状況で2月に入っても継続して います。感染者数も日ごとに増加するなか、どんな取り組みができるのか不安を覚えながら運動方針の作成にかかりました。状況を見 つつ、できることをやっていこうと思います。

今年2021年は全国連結成から40年を迎えます。全国連は1979年の養護学校義務化に抗して地域の学校で共に学ぶことを求め、 1981年に結成されました。「障害のある子も障害のない子も共に」の取り組みが始まったのです。

しかし、2014年に日本政府は国連の障害者権利条約を批准したにもかかわらず、インクルーシブ教育を「インクルーシブ教育シ ステム」と置き換え、「適正就学」として「多様な学びの場」を進め、分離教育を加速させています。乳幼児段階から障害のある子と障 害のない子を分ける就学を推し進め、この10年の間に特別支援学校の数も児童生徒数も増え続けています。また地域の小・中学校もコロナ 禍で前倒しされた「新しい時代の学び」にみられるように、「個別最適化」とし選別教育が加速されています。更に私たちを取り巻く社会 もデジタル化やスーパーシティ法の名のもとに、地域格差や経済格差はさらに拡大されていきます。

差別と分断が進むこうした状況に抗していくために、全国連は結成時からの「どの子も地域の学校へ」に粘り強く取り組んでいかねば なりません。今年度も3つの柱(インクルーシブ教育を求める運動・就学についての相談や支援の活動・活動する組織の運営)で運動を進 めていきます。加えて、コロナ禍で昨年から引き続く課題にいかに取り組めるかも大きな課題です。


1.インクルーシブ教育を求める運動について

①「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」署名を国会に提出し、インクルーシブ教育の実現を求めます
2020年度は、2019年度から引き続き、共に生きる社会をめざして「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」 の署名活動に取り組みました。多くの方たちのご協力のもとに署名数10958筆、賛同団体33団体、署名紹介議員14名となり、院内集会の場で 請願を提出する段階に至りました。しかしコロナ禍の状況で院内集会を延期し、提出時期を模索してきました。その後国会の動向や参加者の状況 を見ながら時期を検討したのですが、2020年度内に実施できませんでした。ようやく2021年の3月と目途を立てたのですが、年初めから 再度緊急事態宣言が出され解除されない状況で、3月の実施も危ぶまれます。しかし請願提出をこれ以上延期するわけにはいきません。できる形 で提出を実施します。
この1年間を見ても分離教育を進める「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」や特別支援学校増設につながる「特別支援 学校設置基準」策定の中教審答申など、インクルーシブ教育に逆行する動きがあります。今年は、請願を提出しなければなりません。学校のバリ アフリー化や少人数学級化がインクルーシブ教育につながるように声を届けなければなりません。障害のある子も障害のない子も共に学ぶ共生教 育の声を大にしていきましょう。

②国連に日本のインクルーシブ教育の実態を訴えます
2019年6月に公教育計画学会と共同でパラレルレポートを国連障害者権利委員会に提出しました。同年9月には、ジュネーブに行き、障害者 権利委員に直接訴えてきました。2020年夏に日本政府報告について障害者権利委員会の本審査が予定されていましたが、コロナ禍で延期とな りました。全国連は障害者権利委員会のロビー活動のため、ジュネーブに派遣団を送る予定で、準備を始めました。しかし、この取り組みも中断 したままです。2021年度は国連障害者権利委員会の状況を見ながら、開催の情報が入りましたら、派遣団の人選や費用のカンパ活動などを検 討していきます。
国連障害者権利委員会の総括所見に全国連の考えを反映させ、それをもとに制度改革につなげていきます。

③第20回「障害児を普通学校へ・全国連絡会全国交流集会」を東京で開催します
2020年度は「第14回障害児の高校進学を実現する全国交流集会」を福岡県で予定していました。実行委員会が結成され準備が進められてきまし たが、この集会もコロナ禍の状況で延期となってしまいました。高校の統廃合や募集定数を減らす動きの中で定員内不合格が出され、高校進学を希 望する子どもたちの不安が大きくなっています。交流集会に代わって会報を通じて情報を交流する企画をたて、会員の皆さんから報告が寄せられま した。
2021年度に予定されていた「第20回障害児を普通学校へ・全国交流集会」も予定地での計画が困難になったため、9月18~19日に東京で開催す る準備を進めています。開催には課題が多いと予想されますが、全国連結成40年を踏まえ、これまでを総括する意味で一つの分岐点だと位置づけま す。全国交流集会実行委員会を結成し準備を進め、開催します。

④共生社会についての現状や問題意識を共有するため学習会を継続します
学習会は、1月に「パラレルレポート ジュネーブ報告とこれからの取り組み」・11月に「コロナ禍の子どもたちの学び」をテーマにしました。コロナ 禍でも参加者は予想以上でした。今年も、GIGA(ギガ)スクール構想や新しい時代の学びなど、共に学ぶ教育と関連した課題をテーマに学んでい きます。私たちの行動が停止している間にも、新しい施策が出されています。継続して学習会を進めていきます。

⑤他団体との交流を進めていきます
共生社会の実現に向けて他団体との交流は、オンライン参加での集会が多くなりました。津久井やまゆり園事件や川崎裁判等実施された集会には、 できる範囲で参加しました。今年度も引き続き、参加・交流を図っていきますが、自粛が強いられる中、交流の手だても考えねばなりません。オン ライン参加を検討し、障害者差別や子どもを分け隔てる教育に抗する団体と交流をはかっていきます。


2.相談・支援の活動について

①相談・支援は、全国連にとって基本的な活動です
2020年度も年間を通して相談・支援を行なってきました。電話相談が中心ですが、ホーページを見てのメール相談も多くなってきました。顔も 名前もわからずの相談もあり、相談者の様子も変わってきています。「障害児を普通学校へ」を進める考えに初めて出会ったという声も届けられま す。それだけ乳幼児健診ですぐに医療へつなげられ、そこから特別支援教育を強制される流れとなってきているわけです。
普通学級の在籍中に特別支援学級や特別支援教室・通級教室を進められる傾向も更に多くなっています。総務省統計局の2020年12月「e―Stat 統計で見る日本 学校基本調査」によると、特別支援学級の児童・生徒数(2020年度)は13年前(2007年度)の約2・66倍となっています。 通級による指導の児童・生徒数は、通級による指導実施状況調査(2020年9月文部科学省)によると、2019年度は12年前(2007年度) の約2・81倍となっています。
全国連では、全国から寄せられた相談は全国連ホットラインを通し各地で取り組むようお願いをしています。また必要があれば全国連として要望書提出 や要請行動に同行する等の協力をしています。コロナ禍であっても、各地の世話人・会員と連携し対応を探っていきます。

②普通学級で学ぶ就学相談の情報を広めていきます
これまで「就学前リーフレット」の活用をはかり、情報を届けてきました。しかしまだまだ不十分です。全国連を紹介するリーフレットの改訂や新 たな「就学前パンフレット」の作成を計画したのですが、活用の機会が見えないため進んでいません。とりわけ2020年度はコロナ禍で「就学相談会」 の実施や個別相談をする機会が減少しました。
朝日新聞の記事「特別支援学校 開校相次ぐ 深刻な教室不足 背景」(2020/8/24)に対し抗議の意味をこめ取材の要請書を出しました。また 、複数の新聞社やテレビ局から取材の依頼もありました。機会があれば、こうしたマスコミやジャーナリズムを使った情宣も考えていきます。情報提 供の道を探します。

③光菅さんの控訴審を支援していきます
本人・保護者の意向が尊重されず、特別支援学校に措置された光菅さんが裁判に訴えた判決は2020年3月18日に「訴えを棄却する」となりました。 横浜地裁は当事者の意思を無視し、共に育つことを否定する不当判決を下しました。光菅さんは「何のための2年間だったのか」「和希をこれ以上待た せられない」と転居を決め、世田谷区立の小学校に転校しました。そして川崎市や神奈川県を許すことはできないと東京高裁に控訴しました。引き続き、 支援をしていきます。


3.活動する組織の運営について

①会員数は現状維持です
全国連の活動を継続し、発展させていくために会の組織は重要です。会員は639人(2020年2月)になります。ここ数年は減少しましたが、昨年か らは現状維持でした。退会者と入会者がほぼ同数です。ただ卒業を機に退会、高齢化により退会の傾向は続いています。今年度も相談や全国交流会集会な どの機会に積極的に入会を呼びかけていきます。

②10回の会報発行をめざします
交流会や集会が持てない中では、会報での交流は重要です。2020年度は何とか10回の発行を維持できました。今年度も緊急事態で発送作業に人手がそ ろわず、遅延することもあるかと思いますが、10回の発行をめざします。
会報の編集や内容は、これまでと同様に教育行政に関する情報提供、問題の共有、各地の取り組み、親や当事者からの報告、そして相談活動の内容を重視し ていきます。また「コロナ禍で」のテーマも引き続き取り上げていきます。

③ホームページを充実し、活用をはかります
ホームページが充実し、活用されてきました。ホームページから情報を得たというメールも増えています。今年度も新しい情報を会員はじめ多くの皆さんに 届けられるように取り組みます。このような状況下では、ホームページの役割も大きくなっています。

④オンラインを活用した会議や学習会を検討します
全国連の組織運営は、月に1回の事務局会と運営委員会、年1回の世話人会と総会で成り立っています。昨年は総会・世話人会を開けませんでしたが、今年 は開催をめざします。日常の活動ではメーリングリスト等を通して交流や連絡を取り合っていきます。外出が規制されるなか事務局会や運営委員会では ZOOM会議ができるように進めています。まだ試行段階ですが、オンラインを活用した会議や学習会での交流を検討していきます。
事務所は会員の当番体制であたっています。
全国連の運動を進める体制を次世代にどうつなげるのかが、今年度も大きな課題です。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

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