障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2020年2月3月382号巻頭文

共に生きる社会を目指して インクルーシブ教育の実現を

―請願署名を提出します―

障害児を普通学校へ・全国連絡会事務局

皆さんから署名が集まってきています。国会議員にインクルーシブ教育の現状を訴え、 障害者権利条約が規定するインクルーシブ 教育を実現させましょう。

3月6日にロビー活動と院内集会を開きます。すでに紹介議員になっていただいた議 員に加え、一人でも多くの議員に呼びか けましょう。文部科学委員会の議員や地元選出 の議員の事務所を訪問し、請願の趣旨を話し、賛同のお願いをします。 ロビー活動後に、 参議院議員会館内で院内集会です。呼びかけ団体の挨拶、大谷恭子さんの講演「インクルー シブ教育と 特別支援教育との違い」、集会に参加された国会議員の発言も予定していま す。

3月7日は、全国連の総会です。特別支援教育の推進がインクルーシブ教育だとする 現状に抗して、どの子も共に学ぶ 学校を目指して運動方針案を考えました。ご検討をお 願いします。また、各地の取り組みの報告もお寄せください。 詳細は別紙チラシをご覧 下さい。

ロビー活動・院内集会・総会への、皆さんのご参加をお願いします。

顔を合わせ、力を寄せ合いましょう。




2020年度   運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会運営委員会

はじめに

1979年の養護学校義務化から 40 年以上たちました。2006 年には国連で障害者権利条約が採択され、2007年に 日本政府 は署名し、国内法の整備が始まり、学校教育法が改正され`特殊 教育から特別支援教育となりました。2013年に 学校教育法施 行令の改正で、就学先の決定は「本人・保護者の意見を最大限尊 重し、合意形成を行うことを原則」とされました。

しかし、学校は障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育 となっているでしょうか。障害のある子も障害のない子も共に 学 ぶ場になっているのでしょうか。全国連は、文科省の特別支援教 育はインクルーシブ教育の実現に向かっていない、むしろ阻 むも のであると指摘してきました。特別支援学級・学校に通う子ども が急激に増えていることからも明らかです。就学前の相談 では、 本人・保護者の意見を尊重せず「適正就学」を徹底し、普通学級 に在籍している子には特別支援学級・学校への転校を強 く指導し ています。また教員養成の教育課程や教育関係者の研修に、医学 モデルのままの特別支援教育を義務付けるなど、あら ゆる場で「多 様な学びの場」・「適正就学」を押し付けています。さらに根底に ある能力主義が年々強化され、子どもたちを振 り分け、学校制度 のあり方も変えようとしています。

こうした状況のもと、昨年度は3つの柱(インクルーシブ教育 を求める運動・就学についての相談や支援の活動・活動する 組織 の運営)をたて、全国連の運動を進めてきました。今年度もこの 柱のもと2019年度の反省を踏まえ、「障害児を普通学 校へ」「共 に生きる社会は共に学ぶ学校から」を求めていきます。

1.インクルーシブ教育を求める運動について

①2019年度は「共に生きる社会をめざして障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」の署名活 動に取り組みました。きっかけは、近年、特別支援教育の充実を求める署名や運動等により「特別支援学校が足りない・特別支援 教育の教員加配を」の声が強く国会に向けられている状況がありました。これに抗するために、私たちの障害のある子も障害のな い子も共に学ぶ共生教育の声を大きく届けなければなりません。
現在、全国各地で私たちの署名活動の取り組みが進み、多くの署 名が集まっています。会員の方々をはじめ障害者団体や教職 員組合 そして労働組合から支援をいただいています。署名協力団体は 16 団 体(1月末現在)となり、請願の紹介議員として 10 名以上( 1 月末 現在)の承諾を得ています。「インクルーシブ教育」が理解されて きていると思います。今後は集められた 署名を生かし、インクルー シブ教育実現の取り組みが求められます。文科省交渉も検討していきます。

②日本のインクルーシブ教育の実態を 伝えるため、昨年の6月に公教育計画学会 と共同でパラレルレポートを国連障害者権 利委員会に提出しました。9月には、ジュ ネーブに行き、障害者権利委員に直接訴え てきました。2020年夏に障害者権利条 約の本審査があります。今年は全国連とし て権利委員会へのロビー活動のためジュ ネーブに派遣団を送ります。そのための準 備を始め、派遣団の人選や費用のカンパ活 動などを検討していきます。国連の障害者 権利委員会の総括所見に全国連の考えを反 映させ、それをもとに制度改革につなげていきます。

③2019年度は、第 19 回「障害児を 普通学校へ・全国連絡会 全国交流集会」を千葉県で開催しました。全国から30 0名の参加があり、各地の仲間がつながりま した。今年度は「第 14 回障害児の高校進学を実現する全国交流集会」が福岡県で 開催 されます。全国連として、障害児の高校進 学の実現に向けて、集会を支援していきます。近年高校の統廃合や募集定数を 減らす動きの中で定員内不合格が出され、高校進 学を希望する子どもたちの不安が大きく なっています。高校が「適格者主義」 から 「希望者全入」となるよう取り組みをすす めます。各地の集会や教育委員会交渉など の運動を交流していきましょう。

④ミニ学習会は、共生社会についての現 状や問題意識を共有するため継続してきま した。7月に「やまゆり園事件を風化さ せない」をテーマに「生きるのに理由はいる の」の上映会・トーク、1月に国連障害者 権利委員会に提出したパラレルレポート の ジュネーブ報告を受け、これからの取り組 みを考えました。今年度は、学習会のあり方も含め内容を検討し実施していきます 。 昨年から引き続き取り組んだ『北村小 夜のことばとわたしたち』が 12 月に発行で きました。パンフレットやブックレットを 通して「共に学ぶ」を広めていきます。

⑤共生社会の実現に向けて他団体の集 会に参加し交流を深め、共に考えてきまし た。2019年度はやまゆり園事件関連や DPI・共同連等の集会と国連障害者権利 委員会関連の集会に参加しました。今年度も引き続き、参加・交流をしていきます。
特に今年は夏に開催されるオリンピッ ク・パラリンピック問題に注視します。ま た共に生きる社会は共に学ぶ学校からを念 頭に、共生社会の根幹にかかわる憲法改悪 の動きについても目を向けていきます。

2.相談・支援の活動について

①相談・支援は、全国連にとって基本 的な活動です。2019年度も年間を通して相談・支援を行なってきました。ホーム ページが充実し、会員以外の方からの相談 も続いています。共に学ぶための全国連の活動を初めて知ったという相談もあります。 内容も「親の希望ではなく特別支援級 や特別支援校を進められている」「担任の 対応が差別的」「合理的配慮がされない」等 が多くなっており、これは教育相談時のハラスメントです。相談には、「全国連ホッ トライン」や各地の世話人の方々と連絡を 取り、その地域での支援をお願いしています。全国連として必要があれば要望書提出 や要請行動に同行等の協力をしています。 引き続き、各地の世話人との連携を強め、 情報を共有し、相談支援活動に取り組んでいきます。

②2019年度は、「就学前パンフレッ ト」の活用をはかり、就学前の皆さんに情 報を届けてきました。まだまだ不十 分です。 全国交流集会では、学校や教育委員会から の特別支援教育への強い指導の実態が報告 されました。区市町村教育委 員会の就学相 談では、就学前から就学時までほとんどインクルーシブ教育へのアプローチがされて いません。本人・保護者の 知らないところ で子どもの障害の情報が使われる状況で す。就学前パンフレットの更なる活用と ホームページでの情報提供を 含め、インク ルーシブ教育の情報を広めていきましょう。

③川崎市で、本人・保護者の意向が尊 重されず、特別支援学校に措置された保護 者が裁判を起こし、3月 18 日に判決の予 定 です。判決の結果を踏まえながら、光菅和 希さんの普通学級転校が実現するまで支援 していきます。3月には横浜地裁の同 じ法 廷で、津久井やまゆり園事件も判決の予定 です。各地の裁判や活動をつなげ、共に生 きる社会は共に学ぶ学校からを訴え ていきましょう。

3.活動する組織の運営について

①全国連の活動を継続し、発展させて いくために会の組織は重要です。会員は 2020年 1 月現在640人になります。 卒業を機に退会、高齢化により退会される 方が続きます。新しく入会される方を含め ても、会員数は減少しています。今年度 も 相談や全国交流会集会などの機会に積極的 に入会を呼びかけていきます。また全国連の紹介パンフレットの改訂をすすめます。

②2019年度は 10 回の会報を発行し ました。会報の編集や内容は、教育行政に 関する情報提供や問題の共有、 ・各地の取 り組み・親や当事者からの報告そして相談 活動の内容を重視してきました。会員の皆 さんに原稿をお願いしたり、 全国連に届く各地の会報からの転載に協力いただいたりしています。今年も充実を目指していきます。

③ホームページが充実し、活用もされ てきました。今年度も新しい情報を会員は じめ多くの皆さんに届けられるように取り 組みます。

④全国連の組織は、月に1回の事務局 会と運営委員会、年1回の世話人会と総会 で成り立っています。まだ世話人のいない 県もありますので、全都道府県に世話人を おけるよう呼びかけていきます。全国連の 事務所には会員が当番で待機し、連絡を 取 れるようにしています。事務所当番や会の 運営メンバーたちも高齢化を迎えていま す。次の世代へつなげる呼びかけが課題 です。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 共に生きる社会を目指してインクルーシブ教育の実現を ―請願署名を提出します― /2020年度   運動方針(案) /2019年度   活動の経過 / ミニ学習会報告 パラレル委員会の再始動を確認 8 月にはジュネーブに派遣団を! /沖縄県教委への抗議文  障害のあるなしにかかわらず希望者の受け入れを /大阪と沖縄のこれ以上ないひどい話の報告 ひどいとも問題とも思わない意識が最大の問題1/ 知的障害のある生徒」の 排除をもくろむ都立高校 ~ホームページで明らかになったこと~/インクルーシブ教育を求める 川崎裁判 第 11回報告 / ●「相談から」コーナー   子どもが授業中声を出すことで 悩んでいます /各地の集会・相談案内 /感想 『北村小夜のことばと私たち』 /事務局から /