障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2019年12月380号巻頭文

勝負は今年を含め3年間 その2

~ジュネーブ国連本部でロビー活動をしてきました~

東京都・運営委員   一木玲子

8月号で、「勝負は今年を含め 3 年間」その 1 を書きました。これはその続編です。そ の1では、全国連と公教育計画学会 の2団体合同で国連障害者権利委員会に提出したパ ラレルレポートについて報告しました。そのパラレルレポートを携えて、9月 下旬にス イス・ジュネーブの国連欧州本部に行ってきました。同行者は、福地健太郎さんという、 幼稚園から大学までインクル ーシブ教育で育ってきた視覚障害をお持ちの方です。

今回、我々が国連を訪問したのは、障害者権利条約日本審査を来年夏に控え、そのプ レセッション(事前会議)が開催された からです。プレセッションでは、障害者権利委 員と日本政府の会議(事前質問事項採択会議)が行われ、日本政府が先に提出して いる「第 1回日本政府報告書」に対して権利委員会から質問(「事前質問事項」)が出されます。 日本政府は採択された事前質 問事項の回答を一定期間後に権利委員に提出し、権利委員 はそれを踏まえて来年の本会議を行うという手はずです。私たちに課さ れたミッション は、障害者権利委員に私たちのパラレルレポートに書かれている日本のインクルーシブ 教育の現状を直接伝え 、今回の事前質問事項に反映してもらうことでした。

9月 21 日、寒さ覚悟で降り立ったジュネーブは、朝晩は寒くジャケットが必要でしたが、 昼間は長そでシャツ一枚でも汗を かくほど天候に恵まれました。国連には、日本からパ ラレルレポートを出した5団体から 50 人ほどが来ていました。権利委員 に私たちの意見 を伝える方法は二通りあります。一つは、「カントリーブリーフィング」という権利委員 と日本の市民団体との 公式な会議。もう一つは、非公式に権利委員と会って日本の現状 を伝える方法です。

カントリーブリーフィングは、 9 月 23 日 10 時? 11 時 30 分に国連 本部の会議室で行われました。会議室は国連会議の模様 を報道し ているニュースでよく見るような円形のもので、前に議長席があ り、それに向かって円形に机が配置されています。我 々はスピー チ時間 5 分間で、権利委員は事前に我々のパラレルレポートを読 んでいることを踏まえ、以下のことを訴えました 。

 

1. 日本の現状:①学校教育にかかわる法律全般がインクルーシ ブ教育を推進するものになっていない②障害のある子どもの 在 籍先も普通学級が原則になっていない③普通学級の在籍拒否や 合理的配慮の提供拒否の事例が数多く報告されている。

2. 日本政府への質問事項案:①教育制度について(障害児の就 学先は原則普通学級とされているか/教育委員会は、保護者に 対 して障害のある子どもの普通学級への就学が可能であり、合 理的配慮が権利として認められていることを知らせることを義 務付 けられているか/独立した第三者の紛争解決機関は存在す るか)②合理的配慮について(アクセシビリティを保障してい るか/ 追加の教員配置を保障しているか/知的障害者への入試 での合理的配慮と評価を保障する計画があるか)

その後の数日間は、数名の権利委員と非公式に会合をし、カン トリーブリーフィングで話しきれなかったことや実際にあった差 別事例について説明をし、彼女たちの質問に応えることで日本の 現状を伝えてきました。

さて、日本に戻った数日後、事前質問事項が国連のホームペー ジに公開されました。教育の部分は以下のとおりです。


採択された日本への事前質問事項( List of Issues : LOIs 外務省暫定訳)
24 条   以下についての情報を提供願いたい
(a) ろう児童及び盲ろう児童並びに知的または心理社会的障害の ある児童を含 め、障害のある全ての者のために、分離された学校 における教育からインクルーシブ教育に向け移行するための、立 法及び政策 上の措置並びに人的、技術的及び財政的リソース配分
(b) 個人ごとの支援を提供するためにとられた措置。全てのレベ ルにおける主流の教育において障害者に対する合理的配慮の拒 否 を防ぐためにとられた措置。また、質の高いインクルーシブ教育 についての教職員に対する制度的な研修を確保するための措 置。
(c) 全てのレベルの教育(第三次教育及び高等教育を含む)にお ける、性別、年齢、障害で他の生徒と比較し分類した障害の ある 生徒の退学率。
出典:第 46 回内閣府障害者政策委員会   資料5より抜粋 (2019年 10 月 17 日)


日本政府の回答締め切りは来年の 6 月 8 日です。我々も政府の 回答とパラレルの回答を権利委員会に送ることができます。 そし て、来年夏の本セッションでも再度カントリーブリーフィングが 開催されます。参加して、権利委員会に追加情報を直接伝 えるチャ ンスです。我々の意見が反映された総括所見が出されるよう、が んばっていきましょう。(その 3 につづく)

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 巻頭 勝負は今年を含め 3 年間 その2 ~ジュネーブ国連本部でロビー活動をしてきました~/2020年度都立高校入試に関する 東京都教育委員会交渉に参加して /帯広で街頭署名活動を行う / インクルーシブ教育を求める川崎裁判第 10 回報告 /渡邊純さんを偲んで/●報告 介助をつけての社会参加を実現するための院内集会 /「北村小夜のことばと私たち」の本ができました /障害があっても地域で楽しく生きる会 第 13 回「卒後を考える交流集会」報告 /●「相談から」コーナー 話すことも座ることもできないのですが /各地の集会・相談案内 /事務局から /事務局カレンダー/