障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2019年2月3月372号巻頭文

2019年度の運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会 運営委員会

今年も総会を迎える時期となりました。運動方針案をお知らせします。3月2日 の総会で承認を受け、方針決定となります。ご検討をよろしくお願いいたします。 総会に出られない方もご意見をお寄せください。障害のある子もない子も地域の 学校で共に学ぶことをめざして、力を寄せ合いましょう。

はじめに

特別支援教育となってほぼ10年、学校教育法施行令が改正されて5年がたちました。 文科省も地教委も、共生社会の形成をめざして特別支援教育の推進を掲げています。し かし、学校はインクルーシブ教育へと動いているのでしょうか。

今、学校は、子ども達を分けて指導することが当たり前となってきています。乳幼児 期から「切れ目のない支援」として、分けられた場での情報しか提供されません。就学 時に普通学級を希望しても認められない子がいます。普通学級在籍中に支援級や支援学 校を勧められる子が増えています。親に付き添いを要求したり、エレベーター設置をし なかったり、合理的配慮は提供されていません。特別支援教育の専門家達は、「特別支援 学級や学校での適切な指導が必要だ」と言っています。

文科省は意図的にインクルーシブ教育をインクルーシブ教育システムと置き換え、イ ンクルーシブ教育システムを構築するために、特別支援教育を推進するとしています。 特別支援教育とは、特殊教育に普通学級を加えて特殊教育を継承発展させるものだといいます。そして、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、 特別支援学校を「多様な学びの場」としました。子ども達は「教 育的ニーズ」や「適切な指導」の名のもとに、この多様な学びの 場に振り分けられてきています。

こうした特別支援教育の推進によって、特別支援教育対象児が 増えています。特別支援学級や学校が足りないとされています。 特別支援教育では、インクルーシブ教育の実現に向っていないこ とが明らかなってきました。むしろ阻むものとなっています。私 たちは、地域の学校で障害のある子もない子も一緒に学び育つ教 育をめざしています。障害のある子が普通学級に入ること、学校 を共に学ぶ学校に変えることが、インクルーシブ教育への道筋で あるはずです。

今年度の方針を提起するにあたって、3つの柱を考えました。 一つは、インクルーシブ教育を求める運動です。二つ目は就学に ついての相談や支援の活動です。三つ目はこうした活動を組織す る全国連の運営についてです。2018年度の反省を踏まえて、 一歩前に進めていきましょう。

1. インクルーシブ教育を求める運動について

① これまでの文科省交渉は、内容の積み上げができていないとの 反省もあり、2019年度はインクルーシブ教育推進の署名活 動と要請行動を行います。この背景には、特別支援教育の充実 を求める「特別支援学校の設置基準」関連の署名運動がありま した。これについて神本参議院議員に国会状況の聞き取りをし、 「対応するには、署名活動を通して国会議員にインクルーシブ 教育の現状を訴える必要がある」と助言を受けました。また、 障害者権利条約に位置付けられているインクルーシブ教育にす るためにも文科省の誤りを正していかねばなりません。内容と 時期を検討して、今年度の大きな運動として取り組みます。

② 国連障害者権利委員会へのパラレルレポートの提出に向けて、 パラレルレポート作成委員会を6月1日に立ち上げました。共 同代表を一木玲子さんと片岡次雄さんとし、9回の委員会を積 み重ね、案文がまとまりました。これから国連に提出する段階 に入ります。権利委員会へのロビー活動を視野にジュネーブへ の派遣団を送ることができるよう進めていきます。

③ 第19回「障害児を普通学校へ・全国連絡会全国交流集会」を千 葉県で開催します。現地実行委員会の皆さんと協力して集会を 担います。また、2018年度の「障害児の高校進学を実現す る全国交流集会」は愛知で行われ、270人の参加のもと高校 進学に向けて活発な議論や運動の交流がなされました。全国連 としても、障害児の高校進学の実現に向けて、この全国交流集 会への関わりを検討していきます。

④ 2018年度はミニ学習会として、「オリパラ問題」「就学時健 診の改訂」を企画しました。2019年度も引き続き、共生社 会についての現況や問題意識を共有するために、学習会などの 集会を企画します。また、北村語録(仮称)を本にまとめ、広 める活動に取り組みます。

⑤ 共生社会の実現に向けて他団体の集会にも参加し、共に考えていきます。2018年度はマイナンバー制度による障害者の管理システム、やまゆり 園関連、DPIなどの集会に参加しました。引き続き、パラリンピック問題などを含 め注視し、それらに参加していきます。共生社会の根幹にかかわる憲法改悪の動きに ついても、目を向けていきます。


2. 相談・支援の活動について

①相談・支援は、全国連にとって基本的な活動だと位置づけて取り組んできました。 2018年度も「全国連ホットライン」として年間を通し、事務局が相談を受け付け てきました。ホームページからの問い合わせもあり、相談件数が増えています。内容 も「保護者の希望が通らない」「支援級を勧められている」「担任の対応が差別的」「合 理的配慮がされない」などが多くなっています。全国連としての対応が求められれば、 要望書提出・要請行動に同行等の協力をしていきます。2019年度も引き続き相談 支援活動を重視して取り組んでいきます

② ホームページや世話人等メーリングリストにより、各地の情報を共有することができ、 相談活動が充実してきています。引き続き、各地の世話人との連携を強め、情報を共 有していきます。相談の充実は大前提ですが、顔を合わせずに声も交わさないメール での相談や匿名の相談、また支援員を探すのみの問い合わせ等、これまでとは違う形 の相談が増えています。ネット社会全体の中での相談のあり方を検討していくことが 求められています。

③ 2018年度は、乳幼児期から特別な支援が勧められる状況に対し、就学時期よりもっ と早くから共に学ぶ情報を知らせる必要があると考え「就学前パンフレット」を作成 しました。2019年度は、就学前パンフレットの活用をはかり、保護者だけでなく 保育所等の就学前の子どもたちにかかわる皆さんに情報を届けていきます。

④ 川崎市で、普通学級希望の意向が尊重されなかった保護者が裁判を起こしました。判決が全国連の運動にも大きく影響する ことを重視し、この裁判を支援してい きます。


3.活動する組織の運営について

① 全国連の活動を継続し、発展させてい くために会の組織は重要です。会員は 700人弱になりますが、卒業を機に 退会される方、高齢化により退会され る方が続きます。障害当事者や保育関 係者や教員達など新会員を増やすべく 声かけをしていきます。相談や全国交 流会集会などの機会に積極的に入会を 呼びかけていきます。

② 2018年度も10回の会報を発行しま した。会報の編集や内容は、教育行政 に関する情報提供や問題の共有、各地 の取り組み、相談活動の報告を重視し ています。文字を大きくし、読みやす いように改善し取り組んできました。 事務局と運営委員会で内容を検討して おりますが、皆さんに読んでいただけ る会報になるよう取り組みます。

③ ホームページは担当者をおき、充実してきました。さらにインクルーシブ教 育・社会を知らない当事者や親達そし て専門家の方達にも広めていきます。 新しい内容を届けられるように取り組 みます。また運営委員メーリングリス トや世話人等メーリングリストも整備 されました。引き続き情報を交換し合 い全国連の運動を進めていきます。

④ 全国連の組織は、月に1回の事務局会 と運営委員会を中心に、年1回の世話 人会と総会で成り立っています。世話 人を全都道府県におけるよう呼びかけ ていきます。事務所は会員の当番体制 であたっていきます。会の運営への参 加を、特に若い世代の会員層に呼びか けていきます。


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