障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2017年2・3月352号巻頭文

2017年度の運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会  運営委員会

はじめに

2016年は私たち全国連の「地域の学校で共に学び共に育つ教育」を求める運動の36年目でした。全国の各地の共生共学の教育、すなわちインクルーシブ教育を求めて運動している仲間をつないで取り組もうとして来ました。

4月より差別解消法が施行されました。合理的配慮の具体的なあり方に目を向け、付き添い強制の問題にどう対していくかも考えてきました。このような制度的な変化を教育、生活の現場で実体化していくことが必要です。

しかし、実際にあらわれてきたことは、むしろ、共に生きることに反するますます差別的な状況でした。 まずは、「多様な教育機会確保法案」といいながら分離をさらに進める動きでした。この問題に対しては、不登校の問題を「分離」で解決してはならないという運動に加わり「ストップを」と取り組みました。このことは、多様性の尊重ということとして、差別解消法による合理的配慮の保障を求めたり、道徳の教科化反対の取り組みにもつながりました。

結局はまさに不登校対策の法律として成立させられてしまいました。そうした一層の分離の動きが、続いてあらわになった指導要領改定の動きの中での「個別カルテ」の問題として現れました。個別カルテは「障害」児を特別な存在として分離し、差別するものになります。こうした一連の動きは、首相の私的諮問機関である教育再生実行会議が主導し、文科省が中教審答申に反映させ、まさに政府・文科省が総体として推し進めるものです。私たちは、学習会、反対集会、そして文科省交渉と取り組みましたが、様々な手法によって実質的に進められており、そうした動きはますます強まっています。

こうしたさなかで起きた「相模原障害者施設殺傷事件」は、私たちの運動にとっても衝撃的でした。まさに「分離」の政策ゆえに起きたこととしてとらえ、あらためて教育が「インクルーシブ教育」であるべきことを声明でも求めました。

私たちは、このような状況に対して、インクルーシブ教育やインクルーシブな社会を求めて活動してきました。以下具体的に2016年度の活動を振り返り、2017年度これからの活動を提案します。

相談・支援について

就学や学校生活に関わる相談や支援の活動は、まさに運動の原点であり、日常的に相談を受けたり、2回実施した「全国一斉障害児の普通学級就学相談ホットライン」等を行ったりして当事者本人・保護者の思いに応えようとしてきました。しかし、相談が以前に比べて少なくなってきている状況があります。そこから、現在は就学前に分離がかなり徹底して進められていること、またそうしたことによって保護者がむしろ分けられることを求めるような状況も起きてきています。

また、「一斉ホットライン」という方法については、こうした就学についての情報が今は電話といった方法よりもネットにより伝わるようになっていることもあり、検討した結果見直しをすることになりました。

インクルーシブ教育を求める運動

私たちは原則統合のインクルーシブ教育を実現させるために、障害者権利条約、差別解消法等を活かし運動を進めています。施行令が改正されたのに就学時の状況は変わっていません。付き添いの強制の問題も続いていますし、合理的配慮を実質的なものにしていかなければなりません。既に述べた「多様な教育機会確保法案」が「不登校対策法」と言うしかない法律として成立させられてしまったり、「個別カルテ」が企図されたり、ますます多様性に不寛容な教育になってきています。多様な子どもたちが具体的に身近にいて共に育つということが「相模原障害者施設殺傷事件」のようなことを起こさせないためには絶対に必要です。「個別カルテ」の問題が示すように、分離を進め「インクルーシブ教育」を阻もうとする動きはますます差別的で一層強まっています。運動を進めていく場、集会として、大阪で現地実行委員会により第12回「障害児」の高校入学を実現する全国交流集会も多くの参加によって開催されましたが、全国連のめざすインクルーシブ教育はまだまだ実現していません。様々な要因から私たち全国連の力量も弱まっていると思わざるを得ませんが、あきらめることなく、世話人会や総会でも議論を深め、活性化をはかりながら運動をすすめていく必要があります。

運動を広める活動

私たちは運動を進め、広めていくために会報を発行し、ホームページを公開しています。会報は年10号を計画通り発行できましたが、原稿集め、印刷、発送と発行体制は必ずしも十分ではありませんでした。

ホームページは、相模原障害者施設殺傷事件が起きた時に会の声明を掲載したように、機能、内容としては一定のことは出来ましたが、素早く機動的に対応するといったことは十分に出来ていないのが現状でした。

新たな書籍等の発行は2016年度はできませんでしたが、機会ある毎に「『障害児と学校』にかかわる法令集」、復刊「康ちゃんの空」などの書籍やDVD「養護学校はあかんねん!」等の販売につとめました。

活動を支える組織の運営

運動を継続していくために会の組織は重要です。会員は名簿上は700人ほどいますが、実際には会費の未納入の会員もいます。会員の高齢化もあり退会者もでています。結果的に、年間何度も会費納入やカンパのお願いをして、会費だけでなくカンパも合わせて会計を維持しているのが実情です。印刷機、パソコンなどの更新も必要になり、その際もカンパをお願いしご協力をいただきました。そうした中で新たに入会される方、運動に加わる方もいます。会の運動はまだまだ進めていかなければなりません。そのためにはこれからも理解、協力を得て会計の維持に取り組んでいく必要があります。

事務局としての運営は、編集委員会、事務局会、会報発行と運営委員会というサイクル、つまり活動の展開と会報の発行を一体的に行うことで運動を進めてきました。

事務所の体制は、事務環境は一定整えられていますが、運営は当番によって行っていて、十分とは言えない状況があります。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

巻頭 「不登校対策法」がもたらすもの / 誰かの手を借りないといけないからこそ、いろんな人と関わってほしい / 愛媛県の特別支援学校で、保護者のつきそいをやめさせました / 相模原障害者施設殺傷事件を問い続ける『「津久井やまゆり園」事件を考える集会』によせて―わが子を通じて見えたもの / 残念でならない「そよ風のように街に出よう』終刊 / 明けましておめでとうございます / 簡単ではないがあきらめない / 相談からコーナー『支援学級から普通学級への転級について』  / 運営委員会こぼれ話 その6 / やまゆり園「建替構想」の白紙撤回を! / 事務局から / 事務局カレンダー