障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2023年4月413号巻頭文

全国連の本気度は これからです

障害児を普通学校へ・全国連絡会  代表 長谷川律子

凍てつくような寒さを感じる今年の冬でした。ちょっとずつ暖かくなり、3月17日の朝は白木蓮が咲き誇って見事でした。季節のずれは感じますが、自然界は摩訶不思議なことがいっぱい! と今更ながらの日常です。

全国連の文科省交渉・世話人会と総会は3月17・18日に開催でした。17日の国会周辺は、連日の各国の要人来日で交通規制や警護体制強化で異様な空気でした。


全国連の〝共に〟は、保育・教育を主に取り上げていますが、人が生きていく上で全ての分野に共通する(連動している)と思っています。

子どもは好奇心旺盛で発想もユニークです。そばにいる大人をハラハラさせることもありますが、肌感覚で吸収し、自然体で受け入れ〝共に育って〟いると思います。字が書けない・話せない・ぴょんぴょん跳んでいる・大きな車イスに乗っている等々は不思議な現象に思えても、同じクラスのAちゃん、Bちゃん…となっているのでしょう。障害への視点ではなく、丸ごとのAちゃん、Bちゃんで、普通にクラスの一員になっています。

こんなにしなやかで、心豊かな子どもの感性を切り離してしまうのは、健常児にとってもとてもとても不幸なことです。兄弟、姉妹も親の姿をみて一緒に暮らしを作り上げています。もちろんこんな風になるのは、そばにいる大人(親・教師ほか)が工夫しながら、分けない〝共に育つ〟ことと根底でかかわっているからだと思います。

たまたま健常児でいても怪我や事故、病気の後遺症で障害者になるかもしれない。老いて認知症が現れてきた時にあわてふためかない予備軍としても大切な共通課題で、自分ごととして思ってもらいたいです。〝共に〟で育ってきた子どもたちは、豊かな心で差別のない社会を築いていくための指標となることでしょう。


文科省とは20数年に渡り交渉をしてきましたが、毎回消化不良でした。今回は限られた時間のため、事前に要請書を提出し回答を文書でいただきました。国連障害者権利委員会による総括所見に基づき、権利条約に規定するインクルーシブ教育の実現に向けての回答は、「基本、分離教育が大前提」となっていました。〝共に〟と〝分離教育が大前提〟は真逆です。

分離教育の何が問題なのか、何が起こっているのか、会場からの発言で訴えました。魂が無い。子も親も助けて…の叫びなのです。昨年もそうでしたが、文科省からの回答は、毎回同じです。全国連としても何とか一つ、一歩でも前への気合いで臨みましたが力不足でした。…反省です。

聴きながら分離教育の歴史を振り返っていました。丁度100年前に盲聾学校政令が公布。1979年に養護学校義務化実施。養護学校に転入者が増えました。文部省前の義務化反対闘争で、寒く雪降る中、全国各地からの当事者は命の叫びをぶつけてきました。私は、転学拒否をされた息子(金井康治)の親として参加させてもらいました。子ども集団に早く入れたい、そして後に続く子どもたちにこんな思いはさせてはいけない。怒り、ふるえる思いでした。その情景は今も焼きついています。息子は、切磋琢磨しながら成長していく8才で普通教育の場を奪われ、命を縮めた…と思っています。44年前が脳裏に浮かび〝人殺し〟と叫んでしまいました。

養護学校義務化は分離教育の集大成、それから分離教育は着実に進んでいる。
・普通学級から特別支援学級・学校転籍へ追い込まれている子どもが急増
・特別支援学校不足で建設ラッシュ
・障害児が普通学級に行くと自己主張するので扱いにくい
・支援学級・学校の生徒は、しつけしやすい

不登校は、学校・大人への不信感の態度表明です。しっかり耳を傾け、時間を共有できる場が、公教育として必要です。

コロナ禍も重なり社会がぎすぎすし、みんなイライラ、余裕がありません。そして、本当に危ない方向に舵が切られていると感じます。政治も議論不足で数合わせ…。でもでも諦めや妥協、きれいごとで取り繕うのは権力者の思うツボ。振り返ったら、戦争に加担していたと先人の言葉を胸に刻んだ交渉の場でした。怒りをぶつけたことへの人間性を問われる空気も感じました。

翌日の総会では、情報・ネットの時代となり、都合の良いいいとこ取りで回していくのか、顔を合わせ議論との併用化を考えるのか、また世代交代も含め、全国連の本気度はこれからだと感じました。

今年度も、皆様と協力し〝共に〟を全力で活動していきましょう。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 全国連の本気度は これからです/総会報告 国連人権委員会派遣・勧告を踏まえ、全国連の今後の課題をめぐって論議/2023年度役員/2022年度決算/2023年度予算/文科省交渉報告 文科省、最後まで「自治体には口出しできない」/拡大世話人会報告/第21回障害児を普通学校へ・全国連絡会・全国交流集会(広島)分科会発題者を募集します/日教組の教研集会に参加して/各地の集会・相談案内/本を出しました/事務局から/事務局カレンダー