障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2022年12月411号巻頭文

永岡桂子文部科学省大臣あてに抗議文を出しました。
私たちの要望を受け認めた国連勧告を歓迎し これを認めない文科大臣に怒り心頭です

  

障害児を普通学校へ・全国連絡会事務局長  高木千恵子

日本政府は、2014年1月に障害者権利条約を批准しました。

条約批准を受けて、障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定など、条約内容の実現が進められてきました。

障害者の権利とは、障害のない者にある権利は、障害のある者にもあるということです。子どもは地域の学校で学ぶ権利があります。ならば、障害のある子も、地域の学校で学ぶ権利があるということです。しかし、「個別最適化」、「多様な学びの場」や「総合的判断」として、障害のある子を普通学級から分離する差別・分離教育が行われています。障害者権利条約第24条に規定されているインクルーシブ教育が全く実現されていません。

私たち障害児を普通学校へ・全国連絡会(以下全国連)は、1981年に結成されてから40年にわたって、障害のある子も障害のない子も共に地域の普通学校で学ぶことを求めて活動を続けてきました。普通学級への就学が認められなかったり、普通学級ではいじめられるからと特別支援学級や学校を強く勧められたり、合理的配慮がなされず親の付き添いを強要されるという相談が寄せられています。相談者と共に学校や各地の教育委員会に出向き要請をし、文科省にも毎年訴え続けています。

全国連は障害者権利条約が批准されたことを受け、国連障害者権利委員会に日本の実態を訴えるパラレルレポートを作成し提出しました。。2021年には「共に生きる社会をめざして 障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」を国会に提出しました。署名は全国各地の団体から多くの賛同を得ました。この8月(2022年)に、日本政府が障害者権利条約を批准して初めての政府報告審査がスイスのジュネーブで行われました。障害者権利委員会による日本政府は障害者権利条約に基づいた政策を実施しているかの審査です。全国連は、インクルーシブ教育が実施されていない状況を訴えるためにジュネーブに派遣団をおくりました。派遣団は、プライベートブリーフィングや障害者権利委員へのロビーイングを精力的に行いました。

9月9日、障害者権利委員会からの勧告が出されました。

その内容には、全国連が勧告に求めた以下の項目が取り入れられていました。全国連絡会の要望を受け入れたものであると歓迎しました。
*質の高いインクルーシブ教育に関する国の行動計画を採択すること
*すべての障害のある子どもに対して通常の学校へのアクセシビリティを確保すること
*通常学校への通学拒否が禁止されていることを確保するための「非拒否」条項及び政策を策定すること、及び特別学級に関する政府の通知を撤回すること
*個別の教育要件に見合う合理的配慮を保障し、インクルーシブ教育を確保すること
*通常の学校の教員及び教員以外の教育職員に、障害の人権モデルに関する意識を向上させること。
*大学入試及び学習過程を含め高等教育における障害のある学生の障壁を扱った国の包括的政策を策定すること

日本政府が国連勧告を受け止めることを期待していました。

ところがです。

勧告が出された直後の9月13日、文科大臣は記者会見で、「多様な学びの場において行われる特別支援教育を中止することは考えておりません」と発言したとの報道がありました。なぜこのタイミングなのかと非常に驚きました。同時に国連の勧告を認めない文科省の姿勢に憤りを感じました。さらに、条約の締約国が勧告を認めないことが許されるのだろうかと疑問を感じました。文科省はどのような検討をしたのでしょうか。

全国連には、文科大臣発言に対する怒りの声がよせられました。文科省にも抗議文が届いていると思います。「国連勧告を聞く耳」を持ってください。

障害者権利条約の締約国である日本政府・文科省に強く抗議し、要請します。
国連障害者委員会の勧告を受け止め 国内政策を進めることを求めます
。 文科省に文科大臣の発言を撤回することを求めます。
障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求めます。

2022年10月

*この抗議文は、文科省に送ったものに一部加筆訂正しました。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 永岡桂子文部科学省大臣あてに抗議文を出しました。/文科省への抗議です 各地から届いた抗議文を紹介します その1 障害児を普通学級へ美作地区連絡会 その2 神奈川・「障害児」の高校入学を実現する会/運動の成果をあの手この手でしつこく迫り広めていきましょう/速報12月6日 文科省への要請文手交・記者会見・院内集会/ジュネーブ報告集会の報告 その2/定員内不合格全国調査の報告/●「相談から」コーナー この1年の相談から相変わらず学校現場の「分離攻撃」が続いています/「障害ある子を分離、人権侵害」大阪の親子が人権救済を申し立て/心に刻みたいもの~共生連集会から全国交流集会へ~/事務局から