障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2022年7月407号巻頭文

STOP! 分離教育〟を胸に、ジュネーブに行ってきます!

ジュネーブ派遣団 運営委員  名谷 和子

私たち派遣団は〝STOP! 分離教育〟とプリントした揃いのTシャツを着てジュネーブに行ってきます。

私たちが権利委員に直接思いを訴えるプライベートブリーフィングは、19日午後と22日午前の1時間ずつです。この時点で、総括所見の草案はほぼでき上がっていて、 ブリーフィングは、委員が総括所見案は妥当か、追加事項がないかを確認して、総括所見を一部手直しするためのもので、思いを訴えるのではなく、委員の質問に答える 場だと説明を受けました。

派遣団ではズーム会議を重ね、与えられた3分間のスピーチの中でいかに多くの質問をしてもらえるかを考慮し、以下のような資料(英語でA4版1枚の制限あり)を作 りました。当日、委員に配布され、これに沿ってスピーチをします。

2022・8・19/22
ブリーフィング資料
障害児を普通学校へ・全国連絡会
公教育計画学会

我々はパラレルレポートで、日本のインクルーシブ教育政策の問題点を6点提示していますが、とりわけ以下の3点について勧告を強く求めます。
(1)日本政府が障害者権利条約を正しく理解すること
(2)障害のある子どもの小・中の通常学級への就学を拒否しないこと。知的障害児を排除している高校・大学の選抜制度を改めること
(3)障害者権利条約に規定するインクルーシブ教育の定義を、日本の全ての教育者が正しく理解する研修をすること。研修は医学モデルではなく人権モデルとすること。

勧告を求める理由
(1)を求める理由
日本政府は、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室といった、「能力が劣る」「画一的な一斉授業の妨げ」と学校側が判断する子ども(以下、便宜的に「障害児」という) を、分離教育する制度を拡充し、排除される障害児が年々増えています。

(2)を求める理由
障害児が通常の学級に入るためには、常に学校や教育委員会と闘い、不必要なやり取りをしなければなりません。3つの事例を紹介します。はじめの2つは、政府に入学が許可 されるよう実名で訴え続けています。
①光菅和希さんの事例
パラレルレポートの通り、小学校への就学を拒否されたため裁判を起こしました。隣の自治体に引っ越して、やっと通常の学級で学ぶことができましたが、裁判は今も続いてい ます。
②佐野涼将さんの事例
人工呼吸器を使う佐野涼将さんは、兄弟と同じ小学校への入学を希望しましたが、教育委員会は2年生になったら転校させると約束をし涼将さんは特別支援学校に入学すること になりました。1年生では週2日小学校に交流及び共同学習に通いました。1年生の3学期、約束は反故にされ、地域の学校の校舎に入ることも拒否されました。毎朝、子どもた ちと校舎の入り口で挨拶を交わした後、隣の公園でフェンス越しの交流を続けて現在4年生になります。
③五十嵐健心さんの事例―母親からの話
健心は「高校が一番楽しかった」と言います。理解のある校長や優しいお友達がいたからだと思います。しかしながら、もう一度行きたいかと聞くと首を横に振ります。試験の 点数が取れないため家の近くの高校に入れませんでした。筋力の弱い健心は、体育で長距離マラソンを強いられて翌日歩けなくなりました。高校を卒業し、大学進学を希望しま したが、知的障害者の合理的配慮がない大変な受験を経験し不合格となり、健心は「僕は大学生になりません」と言いました。支援団体の応援を受けて小中高と進んできた健心 の大学進学は夢となりました。

(3)を求める理由
普通学級に就学しても、人権モデルに無理解な教員に子どもたちが苦しめられている2つの事例を紹介します。
①立畠豪さんの事例―母親からの話
通常の学級籍を認められた小学3年生の豪は、「学校はたのしい」と夏休みでも行きたがります。担任や子どもたちにとって豪がいることが当たり前になっているので、豪は喜 んで学校に行っています。しかし、入学時は特別支援学校を何度も勧められ、就学相談の結果が出ないと通常の学級での入学はできないとも言われました。入学後は、発語がで きないと同級生が嫌がると言われ、週に2,3回学校を早退してSTの指導を受けるよう勧められました。学年が上がると学習についていけないと言われ、別の場所・別の教材 での教育を勧められました。
②青木サラさんの事例―母親からの話
教員から私への言葉です。「特別支援学級の子どもたちは日々厳しくしつけが行われるから、社会に出て困らない。通常の学級ではそのようなしつけはできないから通常の学級にいるあなたの子どもの将来が心配だ」 「私のクラスの生徒は体育祭で頑張ったのに、あなたのお子さんが負担になったから負けたんです」このような担任の態度がクラスに広まり、サラにとって学校は安心な居場所で はなくなり、行きたがりません。

文中の五十嵐健心さん、立畠豪さん、青木サラさんはジュネーブに行きます。当事者の親子が直接訴えることはインパクトがあると期待しています。たくさんの質問を受け、 日本の教育の実情を少しでも詳しく伝え、勧告に反映できるようにと意気込んでいます。日本からも応援してください。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭巻頭〝STOP! 分離教育〟を胸に、ジュネーブに行ってきます!/ 第14回障害児の高校進学を実現する全国交流集会分科会レポート・その2 第1分科会/ 第2分科会/第3分科会/第4分科会/「文科省通知」(4月27日付)が私たちに問いかけるもの/『発達障害』ってなんですか?!~その診断と医療の危うさ~/あの花畑東小学校に入 りました/●「相談から」コーナー子どもが忘れ物をしたときの先生の対応について/各地の集会・相談案内/●本の紹介ADHD大国アメリカ つくられた流行病/事務局から/事 務局カレンダー