障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2022年4月403号巻頭文

若い世代へのバトンタッチを念頭に
 全国連が「共に」のリーダーシップをとっていく決意です

障害児を普通学校へ・全国連絡会  代表 長谷川律子

全国連は、「逆境」に鍛えられている? …強いのかな?

昨年は、コロナ禍でも東京で全国交流集会とポスト集会を開催できました。そして3月18日~19日には、2022年度の世話人会・総会と2年ぶりの文科省交渉が開催で きました。

冷たい春雨が降る議員会館前を歩きながら、ロシアのウクライナ侵攻の情景が浮かんできました。

コンクリートの建物が瓦礫の山となり、寒さで震える市民・子どもたちの泣き叫ぶ声・年配者の狼狽する姿は、我が事のように息苦しさを感じました。どんな理由であれ、 戦争は犯罪です。勝ち負けなくお互いに傷つき、内面を取り戻すのに時間がかかります。被爆国としての日本、福島の原発事故そしてここ2~3年はコロナ禍で学んだ、日常 生活・社会生活の問い直しがあります。「共に」は本当に人類的課題で、人の命より大切なものはないとブツブツ(政治家の皆さん、今 日本は出番ですヨ!)言いながら、会 場に着きました。マスクはしていても、全国の仲間との会話、空気感は、何事にも変えがたいとしみじみ感じました。

昨年は全国連が取り組んだ国会への「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」を紹介議員へ手渡しました。が、その後の文科省の動向を確認し てきませんでしたので、改めて確認したいと思います。

全国連は──
1.分けられた場で育った子どもたちは共生社会の形成はできません。健常児も障害児も。
2.障害児のいる家族(家庭)は、障害があっても子育てをしているのです。兄弟・姉妹と家族が知恵を出しながらの子どもが出会う最初の固まりの集団です
。 3.そして、幼稚園・保育園・学校という地域の同世代の子ども集団へと広がります。「共生・共育」は「学び」へと発展し、人格形成には大きな影響をもたらします。
と訴えてきました。

文科省交渉は水岡俊一議員のお力添えをいただきました。水岡議員は本会議と重なり、残念ながら交渉の場に出席はありませんでした。文科省へは事前に要請書を手渡して いたので、その項目に沿って回答がありました。小脇に書類を抱え若い官僚が入室、「エッ!」またか、その姿を見た途端正直がっかりでした。回答も早口でマニュアル通りの 言葉で全く心に響かない棒読み。

会場からは、①神奈川県の佐野涼将君が4年生になっても就学を認めてもらえず、毎朝昇降口で友達と挨拶を交わすのみで帰らざるを得ないという訴え。②高校受験3年目の 雑賀美佳さんは、受験時の受験配慮無しで(鉛筆を持てないのに、作文をかけ)、人権侵害の行為と言わざるを得ない。たった一人定員内不合格を出された昨日(3月18日)の高 校対応を文書にして手渡しました。

私は、この2例について文科省から生身の言葉を引き出せなかった力不足と悔しさで涙腺がゆるんでしまいました。そうですね。官僚たちは分けられた場で育ってきたので 、理解に苦しむ訴えだったのでしょう。かれらは、出会いやチャンスを奪われたもったいない人生を送るんだと思うことにしました。

昨年の東京集会では、次世代が生まれました。運動のスタイルは背景もあり、変わっていきます。でも変わらないのは、「共に」を追求する〝本気度〟です。「みんな違って いい」です。そして会報40年史を作成しました。(1981年8月~2021年9月の抜粋)なんで普通学級なのか? 障害当事者、専門家(医者、法律家、教師…)そして親た ちの取り組み、地域の活動等など貴重な歴史が詰まっています。

今年度は8月に、国連障害者権利委員会の本審査がジュネーブで開催予定です。全国連はパラレルレポートを提出し派遣団を送り、そこで日本のインクルーシブ教育の実態を訴 えます。9月には福岡の久留米で障害児の高校進学を実現する全国交流集会(実行委員会主催)が開催されます。

子どもたちの奪われた一日一日は、誰も取り戻すことはできませんし、子どもの笑顔は活力の源です。全国連は会員の皆さんとつながり、運営委員会を中心に動いています 。困難な社会・大変な世界状況となってしまいましたが、前へ進むしかありません。私自身は、様々な場面で〝ハッ〟とすることが多くなってきた年齢となりました。情報社会 をうまく取り込み、若い世代へのバトンタッチを念頭に全国連が「共に」のリーダーシップをとっていく決意で、今年度をスタートします。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 若い世代へのバトンタッチを念頭に、全国連が「共に」のリーダーシップをとっていく決意です/2022年度の活動方針が承認されました/2022年度役員/ 2021年度決算/2022年度予算/学習会「北村小夜さんを囲んでフリートーク」に参加して/もっともっと可視化を ─ フリートークを聴いて/文科省交渉報告/ 文科省交渉に参加して/交渉は私にとっていつも「本質」を学ぶ場でした/2022年度世話人会の報告/東日本大震災から10年を経た石巻を訪れて(続き)/【ともまな ネット】立ち上げました/事務局から/事務局カレンダ