障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2022年2月3月402号巻頭文

第20回全国交流集会in東京集会とポスト集会から見えてきた課題です。

障害児を普通学校へ・全国連絡会事務局

この課題にどう向き合ったらいいのかを考えながら、運動方針案をつくりました。運営委員会、事務局会でも検討を重ねました 。社会のデジタル化に対応した情報の発し方、会議や集会の在り方も、見直さねばなりません。方向は見えてきたのですが、どう対 処したらよいのかが課題です。またコロナ感染の終息が見えない中、今年度もできることが限定されてくると思います。

ぜひご意見をお寄せください。

昨年に続き自粛生活の中の、文科省交渉と総会のお知らせです。多くの皆さんに参加を呼びかけたいのですが、一方で「状況をみ てください」です。文科省交渉も総会も、全国交流集会の経験を生かして感染症対策をしながら開催します。顔を合わせ、声を聞き 、意見を交わすと、新たなエネルギーが出てきます。3月には状況がよくなっていることを望みながら、皆さんの参加を願っています。 詳細はチラシをご覧ください。

 

文科省交渉・世話人会
3月18日(金)参議院議員会館
文科省交渉 13時15分受付 14時~15時
              世話人会  15時30分~17時30分

総会
3月19日(土)タワーホール船堀
総会 10時~12時半
 学習会・フリートーク 北村小夜さんを囲んで 13時半~16時 




2022年度   運動方針(案)

障害児を普通学校へ・全国連絡会運営委員会

はじめに

2021年、全国連結成から40年を迎えました。全国連は1979年の養護学校義務化に抗して1981年に結成されました。 「障害のある子も障害のない子も共に」の取り組みが始まったのです。

2021年は、2020年度に続きコロナ感染は収まらず、再び首都圏に緊急事態宣言が出されました。感染者数も日ごとに増加するなか、 どんな取り組みができるのか不安を覚えながらの活動でした。コロナ禍の波は続き対応に追われましたが、状況を見、対策をしながら方針として 掲げた目標にほぼ取り組むことができました。

2021年1月、文科省は「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」を出しました。「新しい時代の学び」とは「少子高 齢化の一方で、医療の進歩・特別支援教育への理解の広がり・障害の概念の変化や多様化など、特別支援教育をめぐる社会や環境の変化に伴い 、特別支援教育を必要とする子供の数は増加している。こうした状況のもと、特別な配慮を要する子供たちがその可能性を最大限に伸ばすととも に、自立と社会参加に必要な力を培うための適切な指導・必要な支援の重要性がますます高まっている」と報告されました。これを受け、202 1年6月には「障害のある子供の教育支援の手引き」が改正されました。(詳細は会報№401)

こうした改正をし、文科省は「一人一人の教育的ニーズを踏まえた学び」を一層加速させて、乳幼児段階から障害のある子と障害のない子を分 ける就学を推し進めています。またデジタル改革やGIGAスクール構想として、デジタル化による「個別最適な学び」とデジタル技術を使った学 習履歴や健診結果などの引継ぎ、活用を求めています。さらに教育の「個別の支援計画」と福祉サービスの「個別支援計画」を共有できるような仕 組みも強調しています。

私たちを取り巻く社会もデジタル化やスーパーシティ法の名のもとに、地域格差や経済格差をさらに拡大させてきました。そしてデジタル改革や ICTを活用した情報提供や情報共有ができる仕組みを提起し、障害のある子の早期発見と早期支援が進められています。

こうした差別と分断が進む文科省の「新しい時代の学び」を問い、こうした状況を踏まえ、全国連は結成時からの「どの子も地域の学校へ」をさ らに推し進めねばなりません。今年度も3つの柱(インクルーシブ教育を求める運動・就学についての相談や支援の活動・活動する組織の運営)で運 動を進めていきます。2022年度は、コロナ感染が収まり通常の活動ができることを望みます。


1.インクルーシブ教育を求める運動について

①  文科省に「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現」を求めます
2021年度は、「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現を求める請願」の署名を国会に提出することができました。2020年度 に予定していましたが、コロナ禍で延期となっていました。多くの方たちのご協力のもとに署名数10958筆、賛同団体33団体、署名紹介議員15名 となり、院内集会の場で請願を提出するに至りました。
この1年間を見ても、インクルーシブ教育に逆行する動きが止まりません。文科省は「障害のある子供の教育支援の手引き」に従い「教育的ニーズ」 をいっそう強調し「早期からの一貫した教育支援」を求めています。2022年4月からは特別支援学校増設につながる「特別支援学校設置基準」 の実施が施行となります。私たちは、学校のバリアフリー化や医療的ケア支援、そして少人数学級の実施がインクルーシブ教育につながるよう運動 をすすめなければなりません。

②国連障害者権利条約の日本審査に傍聴団を派遣し、国連に日本のインクルーシブ教育の実態を訴えます
2019年6月に公教育計画学会と共同でパラレルレポートを国連障害者権利委員会に提出しました。同年9月には、ジュネーブに行き障害者権利 委員に直接訴えてきました。2020年夏には日本政府報告について障害者権利委員会の本審査が予定されていましたが、コロナ禍で延期となりま した。続いて2021年度の本審査も中止となりました。2022年度は国連障害者権利委員会8月開催予定の情報が入っています。今年こそ国連 障害者権利委員会のロビー活動のためジュネーブに派遣団を送るよう準備を進めます。派遣団の人選や費用のカンパ活動などに取り組みます。

③「障害児の高校進学を実現する全国交流集会in久留米」を共催します
第20回を迎えた「障害児を普通学校へ・全国連絡会全国交流集会」は、当初の予定地開催がコロナ禍のため準備が進まず、急遽事務局があり、開催 可能である東京での開催となりました。コロナ感染による緊急事態宣言下であり、2020東京オリンピック・パラリンピック開催中を避けての9 月18~19日となりました。
当日はコロナ感染の不安と台風の中、延べ296人の予想以上の参加者がありました。集会ではズーム配信も初めて取り入れました。顔を合わせ、声 を聞き、リアルな集会になり、参加者の皆さんから、「集会をやってよかった」という声が寄せられました。また交流集会のテーマ「だいじょうぶ  みんなで行こう 地域の学校へ 全国連40年 もっと前へ」をさらに深めるため、ポスト集会を企画し「もっと前に進むために 何ができるのか」を 探ることになりました。ポスト集会もコロナ第6波のなか実施を懸念しましたが、制限人数に迫る参加者があり、内容の濃い集会になりました。
今年は「障害児の高校進学を実現する全国交流集会」が福岡県の久留米市で予定され、地元の実行委員会が準備を進めています。この集会は2020 年開催予定でしたが、コロナ禍の状況で延期となり、2022年の実施となったものです。実行委員会は対応を模索し、2日間の開催を1日としリモ ート参加体制をとり、9月18日の開催を予定しています。
高校の統廃合や募集定数を減らす動きの中で定員内不合格が出され、高校進学を希望する子どもたちの不安が大きくなっています。また高校にも特別 支援教育が導入されてきました。交流集会で情報を共有し、高校で学ぶことを希望する子ども、高校教育を必要とする子どもの入学を求めていきまし ょう。

④共生社会についての現状や問題意識を共有するため学習会を継続します
2021年度はコロナ禍と全国交流集会の開催で学習会が実施できませんでした。
今年は国連障害者権利委員会に向けての学習会を企画し準備を進めます。ここ2年ほどパラレルレポートをまとめた後の取り組みができなかったため 、重点的に取り組まねばなりません。
また「障害の社会モデル」の考えを教育の場にも取り入れるような内容の学習会を検討します。そして文科省のインクルーシブ教育システムの問題点 を多くの方に広めていきます。

⑤共生社会の実現に向けて他団体との交流をはかります
昨年は、コロナ禍の状況で他団体との交流は少なくなり、オンライン参加での集会が多くなりました。第20回全国交流集会IN東京では、他団体に賛同や 参加を呼びかけ、多くの団体から賛同が得られ、広告の掲載などがありました。今年も、子どもを分け隔てる教育や差別に抗する団体と交流をはかりま す。
やまゆり園事件や川崎裁判、DPI日本会議、日本教職員組合などの、また各地で企画される集会への呼びかけを続けます。


2.相談・支援の活動について

①相談・支援は、全国連にとって基本的な活動です。新たに就園相談の在り方を検討していきます
事務所に届く相談は当番が対応し、ホットライン先や各地の世話人に引き継いで担当していただいています。相談担当者に直接相談されるものもあります。
ホーページを見ての相談が多く、最近は電話の相談に加えてメール相談も増えてきました。相談の内容は、小学校就学時・中学校への進学時が多いのですが、 普通学級の在籍中に特別支援学級や特別支援教室・通級教室を進められる相談も入ってきます。高校入学相談も増えてきました。
2022年度は特別支援学校設置基準が施行され、特別支援学校が増え特別学校への就学が強く進められると思います。行政の就学相談は早期発見早期治療に より乳幼児から特別支援教育を勧める内容が多く、子どもを分ける教育が加速されています。こうした中での全国連の就学相談は、共に学ぶ教育を勧めるため の入り口です。2021年度はコロナ禍で、各地で取り組んでいる就学相談会や個別の就学相談の機会が減少しました。今年度は、新たな取り組みを工夫して 情報を届ける手立てを考えていかねばなりません。
第20回全国交流集会で明らかにされた就学時ではなく就園時から「共に育つ共に学ぶ」情報を伝える取り組みも始めなければなりません。幼稚園・保育園など への就園相談の体制を検討し、相談を受けていきたいです。会員の皆さんのご協力を訴えます。
また就学に向けて各地からの要請に応じて全国連として要望書の提出や要請行動に同行する等の協力をしています。今年度も引き続き行います。必要な時は呼 びかけてください。
ホットラインを改訂し、2022年版を作りました。各地で就学相談活動ができるよう活用していきましょう。

②普通学級で学ぶ情報を広めていきます
「障害児を普通学級へ」この呼びかけをもっと多くの方に届けられるよう工夫しなくてはならないと思います。2020年、2021年と全国連を紹介するリー フレットや「就学前パンフレット」の改訂を計画したのですが、まだ進んでいません。これまでの会報とリーフレット、ホームページに加えて、さらに広めてい く新たな情報発信を考えていきます。

③各地から寄せられる就学闘争を支援していきます
本人・保護者の意向が尊重されず特別支援学校に措置された光菅さんが裁判に訴えた判決は2020年3月18日に「訴えを棄却する」となりました。東京高裁に 控訴しましたが、控訴審は公開の法廷でない弁論準備手続で進められています。引き続き注視しながら支援を続けていきます。
岡山からは、保護者の付き添いを強要する「岡山市立小中学校における医療的ケア実施要項」に対し抗議文の要請があり、岡山市教委に提出しました。神奈川の 相模原市からは、人口呼吸器ユーザーの子どもの普通学級への転籍実現に向け市教委や県教育長に要請書を提出し、集会に参加しました。その他全国連に寄せら れる支援要請に取り組みました。
今年度も各地の支援団体と共に就学闘争を支援していきます。


3.活動する組織の運営について

①会員数は現状維持です
全国連の活動を継続し、発展させていくために会の組織は重要です。会員は639人(2020年2月)になります。ここ数年は減少しましたが、昨年か らは現状維持でした。退会者と入会者がほぼ同数です。ただ卒業を機に退会、高齢化により退会の傾向は続いています。今年度も相談や全国交流会集会な どの機会に積極的に入会を呼びかけていきます。
2021年度は会員名簿を改訂しました。会員名簿を活用し、地域のつながりを作ろうという呼びかけがありました。

②10回の会報発行をめざします
2021年度も前年に続いたコロナ禍のなか、10回の発行ができました。会報は400号を迎えました。これまでの会報をまとめ 「全国連40年の歩み」を冊子にしました。全国連の歴史です。その時々の情報が載っており、資料としても貴重なものとなりまし た。
情報がデジタル化され、メールやオンラインでの交流が多くなりましたが、紙ベースの会報の役割も大切なものです。今年度も内 容の充実した会報の発行をめざします。内容は、これまでと同様に教育行政に関する情報提供や問題の共有・各地の取り組み・親 や当事者からの報告そして相談活動の状況を重視していきます。会員の皆様からの投稿も歓迎です。

③ホームページを充実し、活用をはかります
ホームページが充実し、活用されてきました。ホームページから知ったという相談や集会などの情報を得たというメールも増えて います。また「障害児を普通学校へ」という運動や取り組んでいる団体があることを知ったとの声も届いています。
今年度も新しい情報を、会員はじめ多くの皆さんに届けられるように様々な取り組みをします。

④オンラインを活用した会議や学習会を検討します
全国連の組織運営は、月に1回の事務局会と運営委員会、年1回の世話人会と総会で成り立っています。日常の活動ではメーリングリスト等を通して交流や 連絡を取り合っていきます。コロナ禍での緊急事態宣言が出され外出が自粛されるなか、事務局会や運営委員会はズーム会議ができるようにしました。
会員の中から、SNS等を利用したグループを作り、サークル活動的なことをしたいという提案も出ています。こうした会員相互のサークル活動を支援して いきます。組織の運営にオンラインを活用した会議や学習会を検討していきます。
事務所は会員の当番体制であたっています。全国連の運動を進める体制を次世代にどうつなげるのかが、引き続き大きな課題です。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

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