障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2021年9月10月398号巻頭文

「だいじょうぶ・明るい未来がまっている」
全国交流集会に皆さんのご参加をお待ちしています

東京都・会員 全国交流集会実行委員  棚橋聡子

五年前のちょうど今頃、私は幼稚園年長の娘の就学先を地域の小学校の普通学級にするか、特別支援学級にするかで悩んでいました。早期療育を受けながら加配付きで幼稚園 に通っていたのですが、療育先と幼稚園の先生方からは「特別支援教育を受けられるところが娘さんの就学先として望ましい」と言われていました。私も何ら疑うことなく、学区 の特別支援学級の学校公開に足を運びました。しかし、そこで見た一年生の授業内容にショックを受けました。

先生が教材としていたのは、だるまさんが主人公の絵本で、生徒たちに教科書が配られていないことを知りました。教室は廊下を曲がった奥、一番端っこで使うトイレも普通学 級とは分けられ、休み時間も別でした。

特別支援学級は校内で完全に隔離されていて「娘をここに通わせて本当に良いのだろうか?」という思いが湧いてきて、悶々と考えていたときに手に取ったのが片桐健司先生の 著書『障害があるからこそ普通学級がいい』でした。普通学級に居座りを決めたのぶちゃんとクラスメイトが一緒に学び、ときにはぶつかり合いながら子ども同士の関係を深めて ゆくー。一気に読み進めるうちに、本の中に登場する障害のある子どもたちと娘が重なり「普通学級に行かせたい」という思いが私の中で大きくなっていきました。

同じ療育のママ友は皆、就学相談を受けていました。会えば必ず「学校、決まった?」と、聞かれます。私は「普通学級に行かせたい」とはなかなか言えませんでした。就学相 談の申し込みを先延ばしにしながら、夏休みの間、私は夫と何度も話し合いました。発達はまだまだ遅れている娘を普通学級に入れることの不安と心配、でも支援学級に入れた ら、経験できる量も質も乏しく、進路の選択肢は狭まり、娘の人生を考えるとそれは受け入れ難いものでした。

障害があっても地域の子どもたちと一緒に勉強したり、遊んだり、喧嘩をしてもいい、いろいろな経験をしてほしい、というのが私と夫の思いでした。心配事を考えればきりが ありませんでしたが「まずは普通学級からスタートさせてみよう。問題が起きたらそのとき考えよう」と決めました。そして、就学相談はやめました。幼稚園の園長からは大反対 されて悲しい思いもしましたが、娘は家から一番近い地域の小学校に入学しました。

覚悟を決めて普通学級に入れたのですが、学校の対応の悪さと担任からの無理解と差別を何度も経験しました。一年生の途中からは、スクールカウンセラーと校長との三者面談 があり、その度に「解らない授業を聞いているのは本人が辛い」、「今はいいが、学年が上がるといじめの対象になる」、「このままでは、いつか二次障害を起こす」とまで言わ れました。しかし、二年生の担任は娘のそのままを受け止めてくださり、環境も整い始め、娘も落ち着いて学校生活が送れるようになってきました。

覚悟を決めて普通学級に入れたのですが、学校の対応の悪さと担任からの無理解と差別を何度も経験しました。一年生の途中からは、スクールカウンセラーと校長との三者面談 があり、その度に「解らない授業を聞いているのは本人が辛い」、「今はいいが、学年が上がるといじめの対象になる」、「このままでは、いつか二次障害を起こす」とまで言われ ました。しかし、二年生の担任は娘のそのままを受け止めてくださり、環境も整い始め、娘も落ち着いて学校生活が送れるようになってきました。

ところが安心したのも束の間、三年生の担任は娘に特別支援教育を勧め、私に校外学習やプールの付き添いを求め、テスト中に答案用紙を「どうせ解らないから」と言って娘か ら取り上げました。この時、娘はとても悲しい顔をしていたそうです。

でも、嬉しいこともありました。三年生の終わりの校長との面談で「娘さんは、まわりの子どもたちに良い影響を与えている」と言ってくれました。娘はクラスメイトと共に過 ごす中で良い関係性を築いていました。諦めずに普通級で頑張ってきて本当に良かった、と思いました。

今年は五年生です。一泊二日の移動教室にも行きました。時々困ったことも起きますが、休むことなく通学しています。

9月18日・19日はいよいよ第20回全国交流集会です。実行委員会では、コロナ禍でもたくさんの方に参加していただけるように準備を進めています。私の周りでは、普通学級に 入っても親子で辛い思いをして特別支援学級へ移るお子さんを何人も見てきました。今の学校には【インクルーシブ教育】のイの字もありません。逆に分離教育が進んでいくの を感じます。でも、共に学ぶことを諦めたくありません。『子どもは子どもの中で育つ』ことが共生社会の第一歩だからです。

『だいじょうぶ・明るい未来がまっている』と、希望がもてる全国交流集会にしたいです。同じ思いを持った皆さんのご参加をお待ちしています。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭「だいじょうぶ・明るい未来がまっている」全国交流集会に皆さんのご参加をお待ちしています/20回全国交流集会・分科会レポート2【第1分科会 就学前】  保育園での6年間【第2分科会 小・中学校】娘はニコニコ優等生!/ 子どもは子どもの世界で生きている~ドキドキの就学相談を乗り越えて」【第3分科会 高校】押し寄せ る特別支援教育に抗して高校で普通に学ぼう【第4分科会 卒業後】地域の学校で育ち、自立生活を始めた娘【第5分科会 運動課題】ともに育つ教育を阻む壁とは?/全国連結 成40年を振り返る(3)/統計から見る日本の分離教育/●「相談から」コーナー落ち着かなかったり、勉強が遅れたり、支援員になつかなかったり/各地の集会・相談案内/事務局 から/事務局カレンダー