障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2021年4月393号巻頭文

全国連の柱「共に」は 人類的課題

障害児を普通学校へ・全国連絡会  代表 長谷川律子

皆様に お会いできました!

2021年度の総会・世話人会そして院内集会が3月19・20日に無事開催できました。「障害者権利条約が規定するインクルーシブ教育の実現」を求める 国会請願署名を紹介議員に直接手渡せました。筆数としては決して多くはありませんが、一筆一筆の重みと願い……。ご参加をいただいた水岡俊一・参議院議 員からの「お預かりいたしました」の言葉に43年前を思い出し、胸がいっぱいになり、この先の行方の重圧の一瞬でした。

インクルーシブ教育の実現です。インクルーシブ教育システムではありません。文科省の言っているインクルーシブ教育システムは、分離教育ですから…ね。 院内集会では共同連の堀利和さん(視覚障害者初参議院議員)の挨拶が印象的でした。就学をめぐり40年も前の文部省(現在は文科省)は「分ける教育はしてい ない」と言い切った…と。すなわち分けていない考え方とは、個性を尊重する・能力に見合った指導・障害の特性を生かす・手厚い学びの場の保障・となるので しょう。

参加者からは、川崎裁判の光菅和希さんのお父さんが、2年間子どもの集団の場を奪われた悔しさを、そして現在、転居し地域の小学校へ通学し表情豊かにな った和希さんを見て、この違いは何なのか? と訴えました。高校で不当な定員内不合格を宣言された雑賀貴子さんは母娘の現状、支援級から普通学級へ転学した 青木ひろみさんからは普通学級での日常生活の報告がありました。紹介議員から「生の声」を聞きたいとの要望がありましたので、この時間帯は参加者全員が共有 できた内容だったと思います。国会は予算委員会が開催されているため、欠席された議員さんもおり、顔をみせ挨拶をされていきました。

文科省は私たちが求めている表現・表記を、聞き心地の良い言葉に変えています。1979年の養護学校義務化施行から障害者権利条約・障害者差別解消法など いろいろな動きがありました。2012年の「共生社会の形成に向けてインクルーシブ教育システムの構築のため特別支援教育の推進」、これは分離教育の確立です。 文科省の共生社会とは「分をわきまえろ」ということです。2020年の「新しい時代の特別支援教育の在り方…」の「個別最適化」。少子高齢化の一方で多様性・ 多様化をあげ、分類をさらに強化。やっぱり養護学校義務化の集大成に向けて、障害児だけでなく個性的・集団が苦手な普通学級の子どもにまでその刃は突き付け られ、特別支援学級・学校の肥大化になってしまった。ピラミッド型…どこかで見た景色……。これは共生社会ではない。

全国連は今年結成40年を迎えます。当時の子どもたちは中年となり、介護保険と同じように80・50問題にさしかかっています。日本の人権感覚に恐怖を覚えます。

文科省は「分けていない」、私たちは「分けるな」と。水と油の論戦ですが、捨てたものではありません。共に学ぶ現場の実践があります。ねばり強い親子と 支える仲間。熱意(心)ある教師の取り組み。学びの場で出会った子どもたちは、自らの言葉で語り、気づき考え知恵を出します。本人にとっての合理的配慮と環境 を整備することで、普通学級でできるのです。

文科省は「共生社会」を目指すのであれば、「分けない」方向へ舵を切る英断を下すことです。

コロナ禍で様々な人々が息苦しさを感じているのは差別と格差に敏感になっている証拠です。国民が壊れないように請願に耳を傾けてほしい。

子どもたちの笑顔はみんなの活力の源です。次世代につながっていけるよう本年度がスタートしました。さあ、秋の全国交流集会に向けて力を合わせていきましょう。 全国連は、事務局・運営委員・世話人・皆様と連携を取りながら活動していきます。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 全国連の柱「共に」は 人類的課題/●総会報告 2021年度の活動方針は承認されました 2021年度役員 2021年度決算 2021年度予算/2021年度世話人会の報告/●院内集会報告 分離教育は取り返しのつかない人権侵害 ではないか 院内集会とロビー活動に参加して/川崎就学訴訟控訴審第2回を傍聴しました/岡山市立小中学校における医療的ケア 実施要綱についての抗議と要望/●相談からコーナー 普通学級に転級したら就学奨励費が出なくなったが/北村小夜さんの「高校進学」 の話を読んで/事務局から /事務局カレンダー