障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2020年10月388号巻頭文

就学時健康診断、就学相談は 行かないことが一番です

東京都・運営委員  片桐健司

●就学時健康診断(略して「就健」)は、子どもの振り分けが目的
毎年、10月、11月に翌年小学校に入学予定の子を対象にした就健が行われます。これは学校保健安全法に定められた健康診断のひとつで、就学前に行うこととされています。 学校に入ったらすぐに健康診断があるのに、なぜこの時期に健康診断を行う必要があるのでしょうか。それは、健康診断と言いながらその目的が「障害」児を見つけ出し、 援学級や支援学校に振り分けるためにあるからです。

1979年に、養護学校「現特別支援学校」が義務化される前までは、この就健は2月に行われていました。ところが、養護学校義務化の際に子どもたちを障害によって徹底 して振り分けようと考えた当時の文部省は、就健の時期を2月から前の年の10、11月に早めたのです。

こうして、健康診断という名の「入学試験」が、毎年行われています。次の年の入学を楽しみにしているときに、特定の子に対してあなたはこの学校に来てはいけません、 というような就健はおかしいと、私たちは、長い間反対をしてきました。また、就健に行かないように呼びかけてきました。

この就健は、行政に行う義務はありますが 、子どもたちに受ける義務はありません。就健の案内には、どの子も受けなければいけないように書いてありますが、 そんなことはありません。就健に行かない、これが普通学級への第一歩です。

●教育委員会の就学相談は、「相談」ではなく就学先を強制するところ
就健でひっかかった子どもが次に行くところは「就学相談」です。就学前の子だけが対象とは限らないので「教育相談」と呼んでいるところもあります。最近は、早いところでは 就健前の6月頃からこの相談が始まります。すでに申し込んでいる方もあるかもしれませんね。地域の幼稚園や保育園、療育施設で「障害」のある子、少し気になるところがある子 などに相談を受けるように勧めたりしています。日頃、世話になって信頼している方から勧められたからと、何の疑いもなく相談を申し込まれる方も多いです。また、子どものことが 少し気になるのでとか、普通学級に入りたいので、支援を頼みたいので、と相談を申し込まれる方もいます。

しかし、この就学相談は、相談とは名ばかりの、就学先強制機関と思ってください。

就学相談を申し込むと、子どもの検査、観察、面談などがあって、最終的にはその子の就学先を決めるための判断会議(判定会議)というものにかけられます。一度や二度の観察で 子どもの大事な就学先を決めようとするのはずいぶん乱暴な話ですが、だいたいはたくさんの子どものことがいっぺんに審議されるので、次々と判断がくだされます。子どもから見れば 、知らないところに連れ出されて、知らない人に会わされて、とても平常心ではいられないその様子が記録され、あれができない、これがだめと悪いところばかりとりあげられ、それで 決められるわけですからたまったものではありません。

それで、たとえば特別支援学校という判断が出た場合、本人、保護者の希望と違えばそれを断ることはできるのですが、何も知らないと、そこへ行かなければいけないと思わされてし まうことがよくあります。また、断っても、判断結果に従えと何度も親を呼び出して、そこへ行くように強制されることも多いです。

法的には、「親子の意向尊重」となっていますので、最後まで希望を変えなければ希望通りになるはずなのですが、「こんなにできない子が普通学級なんて何を考えているんだ」 「親のエゴだ」「子どもの将来をどう思っているんだ」「先生や周りに迷惑がかかるぞ」とまさにパワハラ、脅しの世界が展開され、親は、自分が悪いことをしているような気持ち にさせられます。そして、希望を変えざるを得ないように追い込まれてしまうのです。このような「就学先強制機関」には、行かないのが一番です。
(役所に相談には行っても、「就学相談」を申し込まないことがポイントです)

●まずは、全国連絡会や地域で信頼できるグループに相談を
インクルーシブ教育の時代というのに、毎年、脅しのマニュアルがあるかと思われるぐらい同じような言い方をされて辛い思いをした方からの相談が全国連にきます。 そして「悪いのは私じゃなかったんだ」と皆さん、ホッとされます。地域の学校に入りたいと思っている方、就学相談等で困っているという方、まずは全国連絡会、 あるいは全国連絡会につながる地域のグループに連絡してください。「障害児が学校に入るとき」(全国連発行)という本もありますので参考にしてください。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭  就学時健康診断、就学相談は 行かないことが一番です/川崎就学訴訟判決の最大の過ちについて(最終回)/高校を拓く 障害児の高校進学のこれまでと課題2/障害児の高校進 学実現に向けて「高校問題の今」紙上交流(その4)愛知 愛知の高校「2020」/千葉 高校生になりたいことに理由はいらない/ コロナ禍でも(その5)早く動きたい/小学生になりました/またまた朝日新聞に「特別支援学校の教室不足」? 要請書を提出しました●相談からコーナー  運動会でリレーや団体競技の参加が難しいのですが /各地の集会・相談案内 /事務局から /事務局カレンダー