障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2020年7月8月386号巻頭文

障害者の高校進 高校はみんなが行くところ

東京都・世話人  北村 小夜

コロナ禍の中ですが今年も難関を突破して新しい高校生が誕生しました。その割合は中学卒業生の98%に達したといわれています。北海道 の平田和毅さん、愛知の後藤姫桜さんをはじめたくさんの障害を持つ高校生も誕生しました。Tさんは、3年間頑張って通っても進級しない高 校に愛想をつかして、改めて別の通信制高校に入学しました。学びたいのです。

昨年亡くなった渡辺純さんは、7浪受験して天国で高校生になったようですが、一方本人の強い希望と力強い支援がありながら、不合格 になった人がいます。定員内不合格という不届きな扱いもあります。障害者差別としか言いようのないケースもあります。高校に合格しない ことには「経済的負担の軽減を図り教育の機会均等に寄与する」という高校授業料無償化からも除外されさらなる不均等をもたらしています。

みんな高校に行きましょう。

世界はインクルージョンに向かっています。日本も障害者権利条約を批准し、障害者差別解消法も制定、施行されましたが、教育界では 「分に応じた」―大臣は「身の丈に応じた」といいましたがー教育・適格主義がはびこっています。文科省は特別支援教育システムと称して、 就学時からの分離を勧め、それに従って“地域で共に”より、障害にあったという特別支援教育を受ける児童生徒が増えています。その全児童生徒 対する割合は2000年度は1.3%でしたが、2017年度は4.2%に達しています。この数字は、地域の普通学級の包括力のなさ、障害児にとっての居づら さの表れでもあります。義務教育段階の支援学校児童生徒が増えれば高等部も増えます。中を普通で過ごしてきた人まで飲み込んで増え続けています。

そこで肝心な、高校ですが、政界・経済界の要請に応じて学力向上を目指し、多様化が進み、学校間競争に懸命で、障害児を温かく迎えようとい う状況にはありません。この情勢に押されてでしょうか、最近障害があっても普通高校を目指そうという人が多くありません。

しかしこの状況だからこそひるむことなく、誇りをもって挑戦すべきです。挑戦しなければ拓けません

高校の厚い壁に立ち向かうには配慮を求める前に、まず支援者を含めて当該が主権者としての自覚を持たなくてはなりません。確かに厚い 高校の壁ですが動かしているのは心を持った人です。

日本国憲法に基づく法規はそれを支えています。日本国憲法は
第26条 すべて、国民は法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する
とし、それを受けて学校教育法は
(小学校の目的)
第20条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。
(中学校の目的)
第45条 中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すこと を目的とする。
(高等学校の目的)
第50条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すこと を目的とする。
とあります。

高等学校は中学校を終えたものの行くところです。すなわち中学校卒業した者は、(特別支援学級であっても、不登校であっても) 総て高校生候補です。

さらに学校教育法施行規則第4章小学校に「履修困難な教科の学習」として
第54条  童が心身の状況によって履修することが困難な各教科は、その児童の心身の状況に適合するように課さなければならない。
とあり、第6章高等学校の第104条に、この規定は高等学校に。準用することが書かれています。

これで、障害があっても高校進学が可能なことが分かりますが、妨げるのが同規則同2節第90条の「高等学校の入学は、第78条の 規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が許 可する」です。この条項が定員内不合格や、障害者排除に機能しているので問題ですが、校長の判断ですから、受け入れるつもりであ れば許可すればよいのです。選抜といっても教育を必要とする順と考えたらどうでしょう。事実、実践例もあります。

また資料を送付するのは主として中学校です。応援の意を込めて提供してほしいものです。

(次号から、この巻頭の続きを「障害児の高校進学のこれまでと課題」と題して連載いたします。)

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭  障害者の高校進 高校はみんなが行くところ /川崎就学訴訟判決の最大の過ちについて(その3)/障害児の高校進 学実現に向けて「高校問題の今」紙上交流(その2)熊本 2019年度 住谷栞音の高校受検報告として/愛知 やっぱり高校楽しいな!/ /●相模原障害者施設殺傷事件を問い続ける やまゆり園事件とトリアージ/コロナ禍でも(その3)テレワーク、リモートワーク /会報2020年6月号(No385)を読んで/中山善人さんを偲んで/●相談からコーナー この子がここにいてはいけないと 思っている先生にどう対応するか/各地の集会・相談案内 /事務局から /事務局カレンダー