障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2020年6月385号巻頭文

生活を激変させる2020コロナ騒動で、学校は

東京都・世話人  山田 真(小児科医)

新型コロナウイルス(以下、コロナと訳します)というぼくたち人間の視力では見ることのできない小さな生物(厳密には生物 とは言えませんが)が、ぼくたちの生活を激変させました。子どもたちにとってもおおきな変化があったでしょう。

ぼくは今回のコロナ騒動を2011年の大地震及び福島原発事故と重ね合わせて見てきました。

この国は、災害・疫病の流行などに際して事実を確かめる調査をしないのです。福島でも健康被害を調べるための疫学調査を しないまま、「被害はない」と言い切ってしまいましたが、コロナについても疫学調査と言えるものをしないままに市民の生活制 限に走りました。

ここでは保育園の閉鎖や休校措置について考えてみます。

安倍首相が恐らく専門家の意見を 十分に聞くこともなく休校措置を決める以前に、中国での経験から「子どもは感染しても発 病することが少なくまた子ども間からうつしあうこともない。また発病しても軽症ですむことが多い」ということがわかっていました。 アメリカで発行されている小児科の専門誌では「コロナは子どもがかかることが少ないので、学校を休校するかどうかはメリットとデメ リットについて検討し慎重に考えるべき」という論文ものっていました。そんな状況であるにもかかわらず安倍首相の一声でいきなり休 校となったのです。子どもたちの教育に当たっている現場の教員の意見を聞くこともなく準備期間もなしの決行でした。

休校措置は長びき、そして緊急事態宣言が解除される頃に、日本小児科学会が「学校の休校や保育施設の休園は感染防止効果が乏しく、 一方子どもの心身に及ぼすデメリットが大きい」とする報告書を発表しました。具体的には「子どもが感染した場合、多くは経過観察や 対症療法で十分な軽症。またインフルエンザとちがって、学校や保育施設で子どもが感染源となった集団感染はほとんどなく、子どもの 感染例は親から感染したしたケースが大半」ということです。

このことは、既に中国の武漢でコロナにかかって発症した70人の子どもについて報告されています。子どもたちのうち、家庭内で最 初に発病した例はなく、すべて家族内の大人からの感染でした。また子どもが他の人にうつしたという例もみられていません。

そういうわけで保育園や学校がクラスターになることはめったにないのです。日本では4月に富山の小学校で教員と児童5人、また北 九州で一つのクラスに5人の感染が認められるということが起こりましたが、これらは例外的なことです。とはいえ、学校でクラスター が起こる可能性はもちろんゼロではありません。

日本小児科学会は「保育所・幼稚園・学校再開後の留意点について」という声明文を5月26日に出してしますが、その中で「学校での 感染症対策を徹底したとしてもコロナ感染のリスクをゼロにすることは不可能」と言い、更に次のように言っています。「もし感染が生じ た場合 、対象となる学校関係者・保護者・園児・児童生徒が差別・偏見・誹謗・中傷・いじめなどで辛い思いをすることがないようにしな くてはなりません。新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識を持って、感染者に対しても偏見なく温かい思いで迎える社会を構築して いく必要があります」。これがコロナ流行に関して一番大事なことでしょう。「コロナにまつわる差別」をうみだしてはなりません。

さてコロナ騒動の後について気になることを書いておきます。それはこれを機に「オンライン教育」が一挙にすすみそうだということ です。そうなると学校は生活の場という側面を失ってしまいます。ぼくは学校という場を「世の中にはいろんな人がいることを知り、その いろんな人がうまく集団を作って助け合いながら生活していく術を学ぶ場所」と考えています。AI授業ではそういう学びはできません 。学校でも一人一人がパソコンに向かって個別に授業を受ける形になれば、パソコンを使えない知的障害の子どもなどは排除されてしまう でしょう。学校が塾化してしまうことは、子どもたちを新たに分断することにつながるでしょう。

これからの学校はどうあるべきかについてみんなで考えてみなければならない時がきているとぼくは思っています。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭  生活を激変させる 2020コロナ騒動で、学校は /川崎就学訴訟判決の最大の過ちについて(その2)/ 国 連障害者権利委員会の日本審査は延期されました!/「第14回障害児の高校進学を実現する全国交流集会inくるめ」開催中止について/ /障害児の高校進学実現に向けて、「高校問題の今」を紙上で交流しましょう/道教委交渉/コロナ禍でも(その2)リメンバー2・27 /この新型ころなウイルス禍にはインクルーシブ教育が効きます/片田舎での新型コロナウィルスの影響/● 相談からコーナー 学校生活が 始まったらどうなるか心配です/各地の集会・相談案内 /事務局から /事務局カレンダー