障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2019年5月374号巻頭文

障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育の推進を

障害児を普通学校へ・全国連絡会 事務局長  高木千恵子

インクルーシブ教育の推進?

それって文科省も言っているよね。文科省のインクルーシブ教育って、本当にインク ルーシブ教育なの? 権利条約との違いを明確にして、私たちのめざすインクルーシブ 教育を言わなければ!

総会でも議論になりましたが、文科省のインクルーシブ教育が押し進められている現 状に危機感を持っています。

個別カルテが出た「教育再生実行会議第9次提言」を振り返ってみます。「一億総活躍 社会」をめざし「全ての子どもたちの能力を伸ばし可能性を開花させる教育」が提言さ れました。この中で、「通常の学級における指導だけではその能力を十分に伸ばすことが 困難な子ども」として、「障害のある子ども・不登校の子ども・学力の低い子ども・優れ た能力のある子ども・日本語が十分でない外国人の子ども・貧困家庭の子ども」を取り 出しました。そして障害のある子どもには特別支援教育を、不登校の子どもには適応教 室や不登校特例校をとしています。今、小学校高学年に教科担任制の導入のことが報道 されていますが、教科担任制は優れた能力のある子どもの力を伸ばすためとして提言に 出ています。インクルーシブ教育もフリースクールも教科担任制も、みんな一億総活躍 するための施策なのです。

だから文科省のインクルーシブ教育は、教育再生実行会議の提言に従い能力に応じて 子どもを分ける教育であり、そのための多様な学びの場(普通学級・特別支援学級・特 別支援学校)であるわけです。

しかし、これでは特殊教育となんら変わらず、権利条約の理念から外れてしまうので、交流 や共同学習を取り入れ、特別支援教育と名を変えたのだと思い ます。そして交流と共同学習を、インクルーシブ教育のモデルとして進めているのです。 下の図は、文科省と権利条約の違いがよくわかるので、了解をいただいて掲載します。(NP O法人〝なかよく〟の代表斎藤和俊さん〈会員〉)

学校が辛い・生きづらいと訴える子、不登校の子が増えている といわれます。学校教育のあり方が子どもたちを追い詰めていま す。学校による子どもの虐待ではないかと指摘する声さえありま す。

こうした課題山積の中、全国連は障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育の推進を強く求めていこうと思います。そのため に、国連の障害者権利委員会にレポートを提出し、日本政府への勧告を引き出したいと動いています。また、文科省や国会、国会 議員に対して、インクルーシブ教育の推進を求める取り組みをしていきます。「普通級への就学を認めること・学校生活を送るた めの合理的配慮を保障すること・そのための予算措置をすること」を求めます。取り組みには賛同団体を募り、請願や署名活動・国 会議員へのロビー活動などを考えています。


こうした文科省への働きかけと同時に、地域の学校へ就学する 取り組みに力を入れなければなりません。早期発見・早期対応が いわれていますが、「ちょっと変わっている?障害がある?特別 な場」となり、インクル―ジョンの視点が欠けています。適切な 支援も、分けられた場での支援ばかりです。インクル―ジョンの ための支援なのか疑問です。

保育園や幼稚園に行っていいの? 普通学級へ行けるなんて知 らなかった! 選択肢があるの? という親たちの声を多く聞き ます。メールや電話相談を受け付け、各地域につなげたり地域か らの要請を受け止め全国につなげたり、必要に応じて学校や地教 委に出向いていきます。普通学級に行きたいと望む子どもや親た ちに応えていきたいと思います。子どもは子どもの中で育つこと を求め、学校のあり方も視野に入れ、共に学ぶ学校づくりを呼び かけていきましょう。

今年は養護学校義務化から40年にあたります

当時「養護学校の先生は差別者だ」と突き付けられ、訳がわか らずうろたえた私でした。あれから40年がたったのに、今もなお 「共に学ぶ学校は」と自問自答しています。しかし歩みを止める ことはできません。今年も知恵と力を出し合っていきましょう。



他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭 障害者権利条約に基づくインクルーシブ教育の推進を/パラレルレポート、国連へ/相談の実態はさらにひどくなっている 全国連絡会への相談から 2019年就学状況/入学しました/卒業・・・そして入学式!/今後の高校生活が楽しみ/インクルーシブ教育を求める 川崎裁判 第5回報告/みんなと共に学び過ごしているカズキのことを多くの人に広めたい 4コマ漫画で!/各地の集会案内/運営委員会こぼれ話 その26/事務局から/事務局カレンダー/第6回 裁判です 傍聴をお願いします