障害児を普通学校へ全国連絡会会報 2018年12月370号巻頭文

相談窓口からみえる最近の就学問題
 法律は変わっても、状況は変わらない

東京都・運営委員 片桐健司

ここ一、二年の相談からみた就学相談等に関して感じたことを書いてみます。

障害者基本法が変わり、それに基づいて学校教育法施行令も改正されました。「共に 学ぶ教育を進め」、「本人・保護者の意向を尊重」するはずの改正ですが、実態は改正 前と何も変わっていないのが現状です。

何らかの「障害」を抱えている子どもが就学相談を受けると、まずそのほとんどが 「特別支援学校適」あるいは「特別支援学級適」と判定されます。ここで親が知らな いと、支援学校や支援学級にしか入れないと思わされ、そのまま判定通り入学してし まうケースが多くあります。教委が判定結果を伝えるときに「障害者基本法では、本人、 保護者の意向が尊重されます」という説明は、ほとんどの方が受けていません。障害 者基本法16条には「十分な情報の提供」ということも書かれていますが、これもされ ていません。たくさんの「障害」児が普通学級で元気に過ごしていることや、普通学 級で、意欲的な先生方が様々な工夫をして子どもたち相手に楽しくやっている話もた くさんあるのに、そういうことは伝えません。

それでもできたら地域の学校に行きたい、いろいろな子どもの間で育ってほしいと 願う方たちが、インターネットや知り合いから全国連絡会のことを知らされ、電話や メールで相談してきます。その方たちは、就学相談のときに普通学校へ行きたいと言っ たがために、(言われ方に差はあるものの)それがいかに間違っているか、普通学校を 希望することは子どものためにならない、悪い親だ、と上からの物言いで責め立てら れています。

連絡をしてきた方に「今は、条約や法律でも共に学ぶことが大 切と書かれていますから、大丈夫ですよ。最後まで希望を変えな いで希望を言い続けてください」と答えると、「本当ですか? 私、 いけないことをしているような気持ちになっていました。本当に そう考えていいんですね」と言う方がたくさんいます。こうやっ て教委や学校は、親の希望(意向)を変えさせ、結果としてその 子は支援学校(学級)を希望(意向尊重)したことにして措置し てしまいます。逆に、最後まで頑張れば、希望の就学先にはおお むね入れています。

何らかの介助や、医療的ケアの必要な子どもの場合は、より厳 しくなります。「この市では介助員はつけられません」「看護師は 配置しません」と平気で親に言い、何も動こうとしない(合理的 配慮をしない)ところが多いです。今年も新年度に向けて、いく つかそういう相談があって、なんとか頑張ってほしいと願ってい ますが、親があきらめるのを待っているかのように、行政は動き ません。本当は、その子たちが安心して楽しく学校生活が送れる ように、どういう「障害」があっても、工夫し、保障しなければ ならないはずです。

その子の「障害」が悪いのではありません。その子の学校生活 を守るのは学校、行政の役目です。支援学校ならそれはするけれ ど、普通学校ではできませんと言うのはおかしな話です。今は、 どの場にあっても配慮はしなければならないのです。それをそう いう言い方で普通学級入学をあきらめさせようとしているのは許 せません。なかなか話が前に進まないことも多いのですが、こまめに地域の方々や全国連と相談しながら、普通学級入学を実現し たいです。

今年、普通学級に入学したある子は、歩行にハンディがあった ことから、入学前に支援学校の判定が出ました。親子は地域の普 通学級に希望していたのですが、それに対して親は何度も呼び出 され、「この市には介助員制度がないから、介助が必要なら支援 学校に行きなさい」と言われ続けました。それでも希望を変えな いで親が頑張っていたら、3月になっても就学通知が届きません でした。そこで全国連から、市教委のしていることは法令違反を していると指摘したところ、すぐに就学通知が届き、多少の問題 はありますが、今は元気に普通学級に通っています。

全国連絡会のことを知らずに、言われるままに支援学級や支援学 校に入学した親子から、いい所と聞いたけどとんでもない所だった、 普通学級に転校(転級)したいんだけど、どうすればいいですか、 という相談も最近よくあります。これもがんばれば実現できていま すが、様々なハードルを学校や教委が作ってきて、時間がかかった り、つらいやり取りを強いられたりすることが多いです。反対に普 通学級から支援学級、支援学級から支援学校に行きなさいと言われ ているという相談も多いです。ひどい話ばかりです。

インクルーシブ教育がこれだけ言われているのに、就学相談の やり方は昔と変わらず、涙を流す親子がいるのは残念です。全国 連絡会のことを入学前に知っていたらよかったのにと思います。 入学前のパンフもできましたので、ぜひ、周りの方に全国連の存 在を伝え、相談してほしいです。

他、記事は以下の通りです。お読みになりたい方は、この機会にぜひご入会下さい。

●巻頭相談窓口からみえる最近の就学問題法律は変わっても、状況は変わらない/インクルーシブ教育を求める川崎裁判 第2回報告・賛同と学習会参加のお願い /第19回 障害児を普通学校へ・全国連絡会 全国交流集会 inちば プレ集会 報告 ~障害のある子もない子も一緒の学校生活を語ろう~あたりまえにみんなのなかで/障がいがあっても普通高校へ『仲村伊織さんの高校進学を実現する会』発足/第13回障害児の高校進学を実現する全国交流集会を終えて/音楽発表会/●相談からコーナー 先生の暴言、虐待/各地の集会・相談案内/運営委員会こぼれ話 その24/『養護学校はあかんねん!』お知らせとお詫び・訂正/前 号校正ミスのお詫び/事務局から