この本がそろそろできあがりそうだという二〇〇〇年の十一月初旬、文部省の「二十一世紀の特殊教育のあり方に関する調査研究協力者会議」の中間報告がだされた。
新聞報道によると「普通学級の門戸拡大」「普通学級選択を尊重」「普通学校就学柔軟に」などと、あたかもこれまでの就学指導体制が大きく変わるような書き方がされている。これはいいことだぞと思うと同時に、この本はいったいどうなんるんだ、役に立たなくなるかもしれない、とちょっとあせった。
しかし、その中間報告をくわしく見ていくうちに、就学指導体制はよくなるどころか、より強化されることになることを知らされた。
この本にでてくる文部省の通達三〇九号(4章Q13)や、学校教育法施行令二十二条の三(4章Q14)は、効力を失ったり、改正? されるかもしれないが、子どもたちを振り分ける実態はそのまま残される。
これまで、たくさんの「障害」をもった子どもたちが当り前のこととして、地域の学校に入っているのに、その実態やそこでの様々な取り組みにはいっさいふれていない。世界的なインクルージョンの動きには(ノーマライゼーションという言葉で)、初めに大きくふれ、あたかも「ノーマライゼーション」の方向でこの中間報告がなされているような雰囲気があるが、中身ではほとんど「ノーマライゼーション」については書かれていない。分離別学体制が当然の前提として、日本では何事もおきていないかのようにこの報告書は書かれている。
これで当分この本は使えそうだと、変な自信をもった。
「障害児が学校に入るとき」というブックレットがだされたのは、一九八八年のことであった。障害児を普通学校へ・全国連絡会の五冊目のブックレットとして発行された。数多いブックレットの中では人気の高い冊子のひとつであり、増刷もされた。
そのブックレットがほぼ完売されたことから、新たな「障害児が学校に入るとき」の出版の話がもちあがった。同じ版で増刷するという案もあったが、この際、新たに作ったらどうか、さらに一般の書店でも手に入るように単行本としたらどうかという方向で話が進んだ。
前回のイメージにとらわれず、全く新しい発想でということで、小俣、宮崎、片桐の三名が編集担当となった。さらに、編集を進める段階で、千書房の千田さんもメンバーに加わっていただいた。こうして、できあがるまでに何回もの編集のための話し合いをもち、連絡を取り合いつつ、作業は進められた。
宮崎さんには、障害をもつ子の親が入学のときにどんな悩みや心配をもつか、何が知りたいかを取材していただいた。小俣さんには、初期の段階で全体の構想についての提案をいただいた。千田さんには、これらの内容をどういう形で本にできるかの示唆をいただき、また文章や用語の整理、説明など最後の細かいつめのほとんどを担っていただいた。最終的に、宮崎さんを含む三人の親の体験と、Q&Aという形で、まとまることになった。体験を書くことを快く引き受けてくださった、宮崎さんと、竹内さん、白石さんにお礼を申し上げたい。
この三人三様の体験とQ&Aによって、障害児が地域の学校に入るときの課題のほとんどをとりあげることができたかと思う。
私たちが願っているのは、どんな人でも当り前にともに生き合える社会を生み出すことであり、そのためには、まず学校で「共に」を実現していきたいということである。残念ながら、最初に述べたように、文部省は相変わらず分離別学にこだわり続けている。この状況は何とか変えなければならない。
しかし、国の姿勢を変える方向は常に追求していかなければならないが、現状の中でそれが変わるのは、いろいろな子が当り前にそこにいることから始まるのではないかと思う。大変な道ではあるが、ともに歩み続けることができたらと考える。そのためにこの本が少しでも活用いただけたら、うれしい限りである。
最後に、この本の出版にあたり、千書房の千田さん、若杉さんに多大な力添えをいただいた。また、中央経済社社長の山本時男さんには、出版にかかわる物心両面での援助を、北村小夜さんには、4章「Q&A」についての細かいアドバイスをいただいた。この他、たくさんの方々の支えの中で出版にこぎつけることができた。皆さんに深く感謝したい。
二〇〇〇年十二月
障害児を普通学校へ・全国連絡会 運営委員 片桐 健司