全国連絡会の書籍

原則統合をもとめて
「北海道・障害児普通学級入級訴訟」を再考する

『原則統合をもとめて「北海道・障害児普通学級入級訴訟」を再考する』表紙
古川清治著
千書房刊 上製 A5判 304頁
定価4,500円+税

 一九九三年一〇月二六日の旭川地裁判決は、車いすを使用する山崎恵さんと親が「普通学級で共に学ぶこと」を選ぶ学級選択権を否定した。判決理由は「通常の義務教育学校は明治以来、極端な個人差を持つ者は就学して来ないのが前提だ」というものだった。札幌高裁判決は翌年五月二四日、その日は奇しくも子どもの権利条約が日本で発効した二日後のことであった。国際的な教育の流れは、インクルーシブ教育などへ動き出していたが、札幌高裁はそうした情勢を無視するかたちで、山崎さんの控訴を棄却した。これは、四日前の五月二〇日に旧文部省が「子どもの権利条約の批准にあたって国内法の改正は必要ない」とした通知と見事に符合するものであった。
 「北海道・障害児普通学級入級訴訟」は義務教育において「普通学級で共に学ぶこと」を選ぶ学級選択権をもとめておこされた裁判の唯一の判例であり、第4部には判決文の全文が掲載されている。
 本書では、日本における普通教育はそもそも分離を原則としており、そこには紛れもなく排除の論理が貫かれていることを指摘している。その一方で、共生共育を求めてきた側の間でも、根本的な問題解決へ向かっていくような議論が展開されてこなかったと自戒する。各学校で障害児が個別的・例外的に普通学級に入らざるを得なかった状況を、多様な視点から理論的に総括し、その上で、文部科学省が推し進めようとしている「特別支援教育」こそがインクルーシブ教育を骨抜きにするものであることを明示していく。自身障害者の親であり、この裁判闘争に深く関わった筆者が日本での原則統合実現に向けた条件をさぐっていく話題作だ。

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